内容説明
「城」とは何か、土塁と堀に囲まれ、もっぱら“戦争”の場と捉えられてきた中世の城や館は、じつは“政治的”“日常的”な場でもあった。武勇ではなく安穏を求めた社会の現実を踏まえ、中世の城の新たな実像に迫る。
目次
中世のお城―プロローグ
戦国山城の出現(本城の出現;臨時の城館;屋敷の非軍事性)
武家の屋敷と寺院(屋敷の周辺;極楽往生;現世利益)
本拠と要害(武家の本拠―遠江国の事例;周辺の様相;要害誕生の背景)
中世武士の本拠―エピローグ
著者等紹介
齋藤慎一[サイトウシンイチ]
1961年、東京都に生まれる。1989年、明治大学大学院文学研究科博士後期課程中退。2001年、史学博士。現在、(財)東京都歴史文化財団江戸東京博物館学芸員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
128
普通お城というと織豊時代から江戸時代などに築城された典型的な城のイメージを浮かべると思われますが、ここで触れられているのは鎌倉時代に言われているお城の研究です。中世の鎌倉というのは三方を山で囲まれ海が正面にあった鎌倉城といわれていたということのようです。宮城谷さんのお城の探訪記を読んでもそのような感じのところが多かったようです。この本は城ばかりではなく寺院やその武士の居住の場所についても研究されていて別の観点から楽しめました。2016/07/31
Toska
10
久々に再読。大著『日本城郭史』のプロトタイプとなった一冊だが、時代を中世に絞っているためサイズが手頃で、しかも個々の事例が具体的に紹介される。戦う場ではなく、生活する空間としての城がメイン。宗教的な機能の分析も興味深い。西を聖地と見立てた武士の本拠地の空間構造は、例えば八王子城などにも共通しているのではないか。色々な意味で城を見る目を変えてくれる。2023/04/04
ウォーカージョン
6
中世の城というと山城を思い浮かべるが、この場合は違う。安穏を求めた中世の武士の本拠の話。東西を軸に設計している。この城は戦闘目的ではない。安穏を求めているのだから非常事態に作られた山城は使い捨てなのか。一国一城令にもそれなりの根拠があったんだなあ。2016/10/02
こまさん
4
たぶん、普通の城の本だと思って読んだら裏切られる本。武士の拠点の話はとても面白く、宗教的拠点と絡んだ考察はたいへんためになった。2016/10/27
mach0.9
4
単独で読んだとき、中世城郭についての史的読み物風な感想を抱いたのだが、後に中世の村のかたちと暮らしを読んではたと気づいた。後者に指摘されている土地利用の形態が、本書によって良く説明されている。本書は中世城郭の由来を主にしたものであるが、地図を併載し、周辺を含めて記述している。必ずしも農地等の記述は深くないのだが、この地図を読みこむと、中世の村のかたちと暮らしに指摘されている、中世の土地利用と実によく適合する。この二つの書籍はぜひ、合わせて読み、読みこんでもらいたいと思う。僕は今、実に知的に興奮している。2013/03/26