出版社内容情報
第2次大戦後、ナチスの戦争犯罪を裁く国際法廷が開かれた街ニュルンベルク。だが、この古都はヒトラーに愛され、ナチ党全国大会開催地としてドイツの現代史をになっていた。壮大な光のページェントを現出したナチスの祝祭空間。その背後で展開されたユダヤ人の強制移送。大衆運動としてのナチズムを多角的に論じ、「ヒトラーの時代」を改めて考える。〈主な目次〉ドイツのトラウマを表象する芸術―プロローグ/都市とナチズム(1920年代までのニュルンベルク/ユーリウス・シュトライヒャー/初期のナチスとニュルンベルク)/暴力と祝祭の空間(全国党大会の歴史/政治的公共性の変質―突撃隊の暴力の空間と生態―/シュテークマン危機とレーム事件/『意志の勝利』の虚構性)/人種法と絶滅収容所(ニュルンベルク法とカッツェンベルガー事件/「アーリア化」とユダヤ人/ニュルンベルク・ユダヤ人の強制移送/終戦とニュルンベルク裁判)/ナチズムが刻みつけたもの―エピローグ/あとがき
内容説明
ナチスの戦争犯罪が裁かれた街ニュルンベルク。だがこの街はナチスの全国大会が開かれた光あふれる祝祭空間であると同時に、ユダヤ人強制移送の暗黒の舞台でもあった。大衆運動としてのナチズムを新視点から描く。
目次
ドイツのトラウマを表象する芸術―プロローグ
都市とナチズム
暴力と祝祭の空間
人種法と絶滅収容所への移送
ナチズムが刻みつけたもの―エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
のとや書架
3
ナチス党大会の舞台となったニュルンベルクと、ナチスの変遷とその体制に関して言及されている。ナチスがこの都市をどのように利用し、この都市にすむ人々がどのようにあったかを著述している。 また、リーフェンシュタールの『意志の勝利』に関して、様々な興味深い指摘がある。ひとつの政権を考える上で、都市をひとつのコアとして考えるのは有用な方法ではないだろうか。2012/05/13
asukaclaesnagatosuki
1
文学部の方に非常勤講師で出講に来られていた時の講義と同じテーマを後に単行本化。リーフェンシュタールの『意志の勝利』を扱った章では第三帝国の人種政策および親衛隊研究の第一人者である芝先生の詳細な分析が読める。刊行時サバティカルでベルリン滞在の芝先生に図書新聞が取材して大きな紙面で掲載していた。取材インタヴューでは本で紹介されているニュルンベルグ法の適用事例カッツェンベルガー事件が発生するドイツにおけるユダヤ人の状況との関連で、『イエルサレムのアイヒマン』でシオニストとSSとの関係に言及したためアーレント(続
印度 洋一郎
0
ナチスの党大会が開かれていた都市ニュルンベルグと、ナチス体制との関わりについて考察している。奇矯な振る舞いで知られるナチの高官ユリウス・シュトライヒャーの地元でもあり、"ナチの聖地"としての色々な条件が整っていたらしい。リーフェンシュタールの「意思の勝利」と実際の党大会の進行との違いや、幻の「信念の勝利」についての言及なども興味深い。多くの紙数を費やしている、カッツェンベルガー事件と戦後における関係者の裁判も、ナチの価値観と戦後西ドイツとの関係で考えさせられる。2012/03/07
さわな
0
タイトルに「ヒトラー」とついているけどヒトラー自身についてはほとんど語られない。ナチの変遷がメイン。親衛隊は聞いたことあるけど突撃隊は聞いたこともないレベルの知識しかなかったので目新しかった。 ナチ=ヒトラーとつい思ってしまうのだけど、組織で、ヒトラー以外の人たちも関わっていたのだと再認識。 ホロコーストについては収容所内での出来事はほぼ記載がなく不平等な裁判がメイン。2022/04/22