内容説明
いつの世もどこの世界でも、権力者に対する批判は存在する。幕政・幕閣を戯評し、人々の喝采を受けた風刺画は、時には厳しく断罪された。作者・板元の意図、民衆の評判などを総合的に捉え、江戸世相史の一面を鋭く描く。
目次
現代と江戸の風刺画
消費者金融問題のはじまり
金権の時代と世直し大明神
寛政改革への批判
歌麿・豊国・一九の筆禍
天保改革と風刺画
弘化・嘉永期の風刺画
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やまだてつひと
3
江戸時代の風刺画 特に水野忠邦等が妖怪として描かれており、それを判別するために家紋を入れたりするなどして、分かる人には分かる書き方をしていたようだ。それはお上が出版物を検閲をしていた為であり、直接的な表現を避けていたのだと思う。風刺画ではないが、ロシアのアネクドート等は、口頭で伝聞するため、「妖怪」のような空想上のキャラクターはあまり登場しないので、その差はかなり面白かった。特に受け手側が独自の解釈をしていくというスタイルは、アメリカンジョークやアネクドートといった海外の風刺とはかなり違う点は留意したい2024/05/21
印度 洋一郎
2
現在の漫画のそもそもの原点とも言うべき風刺画。落書きみたいなものなので、とても後世に残り難いが、江戸時代になると出版産業の勃興のお陰で、商業出版物として流通したものが残っている。この本では、18世紀末の田沼時代からの風刺画を扱っているが、やはり田沼意次と水野忠邦(天保の改革の)ネタが多い。この二人、よほど庶民の恨みを買っていたと見えて、"怪物"扱いの画ばかり。これを見ていると、まるっきり現在の新聞の政治蘭の一コマ漫画の源流だ。「はんじもの」と呼ばれる、絵に隠された暗喩を読み説く作品も面白い。2011/08/17
ATSU
1
地震をはじめ,社会のことだけでなく,政争や幕府と薩長の争い等も江戸っ子,風刺絵にかかれば,けちょんけちょん。 あの天璋院(篤姫)も静寛院宮(和宮)も・・です。安政2年の江戸大地震の時は鯰絵の無断出版400種(『なゐの日並』)無届出版で逮捕されても銭5貫文ですむという風潮もあり,地震に関する出版物は多かったのです。鯰絵の絵と文を読むと,これを世直しと見,金持ちを懲らしめて,金を吐き出させる鯰や世直しのために出現した鯰!戊辰の春には30万余の風刺画が出版されたとのこと(『藤岡屋日記』)この本すでに絶版,残念2017/11/08