出版社内容情報
前九年合戦で安倍氏を滅ぼした平安中期の武将。京で築いた政治基盤に着目し、『吾妻鏡』『陸奥話記』から伝わる人物像を見直す。
内容説明
平安時代中期の武将、源頼義。八幡太郎義家や頼朝を輩出した河内源氏の祖、頼信の長男として生まれる。藤原道長に仕えた父と共に平忠常の乱を平定。相模守を経て陸奥守として赴任、前九年合戦で苦戦の末に安倍氏を滅ぼした。父や弟頼清の活動や京で築いた政治基盤などに着目して生涯を辿り、『吾妻鏡』『陸奥話記』から創出された頼義像を見直し実像に迫る。
目次
頼義の誕生
武門源氏の成立
父頼信の台頭
『今昔物語集』に見る頼信
平忠常の乱
頼信一門への恩賞
文官頼清
頼義と小一条院
頼義の陸奥守就任―前九年合戦の前提
前九年合戦の開戦〔ほか〕
著者等紹介
元木泰雄[モトキヤスオ]
1954年兵庫県生まれ。1983年京都大学大学院博士後期課程指導認定退学。1995年京都大学博士(文学)。現在、京都大学大学院人間・環境学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ようはん
17
源頼義の事は名前だけで多くの事は知らなかったが、この本でその生涯を詳しく知る事が出来た。一番のハイライトである前九年の役でかなりの高齢で息子の義家と五十歳ぐらいの年齢差があったのは意外。弓の腕に秀でてそれなりに人望がある勇猛な武人であるが、讒言を信じて敵である安倍頼時の娘婿ながら味方だった平永衡を殺害し同じ娘婿である藤原経清(藤原清衡の父)の離反を招いて前九年の役前半の不利が生じ、拠点攻略で敵の挑発に乗るなど軍指揮官としては一流というにはやや欠ける印象。2021/07/09
MUNEKAZ
8
前九年合戦を鎮圧した頼義の評伝。相模守に叙任され、受領となったのが49歳と遅咲きな上に、75才で迎えた前九年合戦が初めて大部隊を指揮する機会で、かなりの苦戦を強いられたりと、個人的な武勇はともかく、武家の名門・河内源氏の名とは裏腹な生涯という印象。また文官として摂関家に伺候し、官位も受領国もすべてで兄・頼義を上回った弟・頼清の存在も興味深い。のちに「武家の棟梁」の祖として神格化される兄と、歴史のかなたに消えた弟を思うと、貴族の世と武士の世のはざまを見た気がする。2017/09/27