内容説明
徳川慶喜―江戸幕府最後の将軍。討幕の動きに対抗するが、それが不可能だと判断した時点で大政奉還に突如打って出る。鳥羽伏見戦争後、江戸に逃げ帰り謹慎生活に入ることで歴史の表舞台から消え、明治・大正時代は趣味の世界に没頭して過ごした。その複雑な性格と行動から評価の一定しなかった77年間の生涯を、新たな研究動向のうえに立って描き出す。
目次
第1 幕末期のキー・パーソン誕生
第2 京都政局への登場
第3 禁裏御守衛総督に就任
第4 慶応期前段階の慶喜
第5 「将軍空位期」時代
第6 将軍時代
第7 明治・大正時代―歴史の表舞台から姿を消す
著者等紹介
家近良樹[イエチカヨシキ]
1950年生まれ。1982年同志社大学大学院文学研究科博士課程単位修得退学。中央大学博士(文博乙第九号)。現在、大阪経済大学経済学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
10
烈公の評伝を読んだので、次は息子の方を。一読して感じるのは慶喜の孤独さ。江戸の幕閣とは敵対し、薩長をはじめとする雄藩ともギクシャクするなど確かな支持勢力に欠け、孝明天皇からの信頼のみが京都政局での命綱になっている。確かにそこから事態を打開していったのは慶喜の凄さなのだが、「寵臣」という立場故、天皇の代替わりであっさり形勢逆転となる。著者も指摘する下の者に対する視点の欠如、長い余生での身の振り方を考えると、とにかく「天皇」だけを見ていた生涯のようにも思える。2019/07/11
lila*
6
【図書館】先に読んだ松浦版が1975年発行。これが2014年発行。そもそも幕末なんて、現代から一番近い歴史なのにこの40年ほどの間にも史実として認識されていたことが変わっている。しかもまだまだ研究中。徳川慶喜1個人を追っただけでこれなんだから、幕末史がおもしろいというのも納得。ちなみに今の学校ではどんな感じかと中学生の娘の教科書を見てみたけど、桜田門外の変~明治維新で4ページくらい。それじゃ興味なんか持てないよね。2016/07/12
RAN
2
ある程度の知識はあったが、より詳細に知ることで理解が深まった。読みやすく過不足がない。特に隠居後の生活は、もっと端折られてると思っていたが、短いながらきちんと描かれていたのはとても良かった。 良い悪いの両論併記があり、冷静さと深い洞察力で読ませてくる良書。2021/09/27
やま
2
濃密な内容で、徳川慶喜の生涯全体を過不足なく叙述している。後半生の隠居生活も意外に興味深く読める。2018/07/12
ホンドテン
1
図書館で、野口(11)の補足として。書簡、日記資料から確定できる事実と推察される決断過程に併読の司馬(1967/1992)との落差を感じ入る。会津の報復意向に抗しきれず長州征伐に賛意など一会桑政権維持の困難(容保帰藩の現実味)や孝明帝逝去さえ開国の種にしクーデター情報を察知しながら黙過するなど新しい像が語られる。明治以降の遁世では影の薄い海舟が些か意地悪く描かれるが野口(06)の齟齬を知ると成程合点。容保、定敬と春嶽らと謀議加担した慶勝(尾州)が兄弟なのを巻末系図から再確認、集合写真もあり感慨深い。2021/11/29