内容説明
行成は生前「世のてかき」と讃えられ、現代も三蹟の一人として知らぬ人はない。しかし彼の本領は、藤原道長の摂関政治体制の中に生き、それを支えた典型的貴族官僚としての活動にある。本書は彼の日記『権記』を手がかりに、その実像に迫り、信仰や人生観など内面生活にも目を注ぎながら、当時の政治や宮廷社会のあり方を浮彫りにしている。
目次
序章 三蹟・四納言
第1 誕生から元服―輝かしき家系とその明暗
第2 官途への出発―修業の時代
第3 頭弁行成へ―繁忙の日々
第4 大丞の座―一帝二后
第5 世尊寺供養―無常の世を踏みしめながら
第6 宰相の座へ―明暗の除目・去り行く人々
第7 恪勤の上達部―苦衷と栄達の道
第8 侍従中納言―一条朝の終焉へ
第9 三条天皇の代に―暗雲の時代
第10 後一条朝開幕―御堂専制の世に
第11 翳り行く名門の誇り―彼岸への旅立ち
第12 藤原行政の人間像―学識・才芸・心的傾向
第13 藤原行成の周辺―家族・居宅・家政機関・世尊寺家
藤原行成関係系図
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅてふぁん
31
平安中期の公卿『三蹟・四納言』藤原行成。とにかく多忙で天皇と道長の間を行ったり来たりで大変そう。彼の愛妻家で子煩悩なエピソードもちらほらと( *´艸`) 事あるごとに願文や書状を清書し、書物や経典を書写し寺院の寺額なんかも書いているのだから、もっと真筆が遺っていてもいいのにと思ってしまう。現代に手蹟が遺っていることに感謝しないと、ということはわかっているけれども!行成が書いた屏風歌、仮名文字を見てみたかったなぁ。2018/03/11
高野
5
あちこちの史料・資料にちらばる行成の記述を、時系列・テーマ別につなぎ合わせることによって人物・藤原行成の実像を浮かび上がらせてくれる。 小説的な読みやすさはないけれど、行成好きには面白く読めた。所々に家系図や図解があれば尚よかった。2012/06/10
預かりマウス
3
穏健で堅実な書であり読みやすいが、関心をそそるような劇的な書きぶりではない。平安時代史に強い関心がなければ聊か退屈かもしれない。行成はあまり和歌は上手とは言われないが、p.116「世の中をいかにせましと思ひつつ起臥すほどにあけくらすかな」に彼の無常感が率直に込められているのではないかと思う。2018/08/24
ひろただでござる
3
誠実で律儀信仰心篤く愛妻家で子煩悩、おまけに人の顔色をよく見、機転が利き機知に富んだ人柄…でもちょっと強情。同時代の曲がったことが嫌いで道長に同調(あまり)しない実資とは少々異なる(家柄のせい?)。権記からだけでは読み取れない諸々をほんの少しは知ることができたように思う。2018/08/16
kei
3
能筆家・能吏として有名な藤原行成の生涯を、勤勉な文官、宮廷人として描く。三蹟とも評される彼の書家としての一面よりも、宮廷での振る舞いや仏教に信仰を寄せる一面に重点をおいて淡々と記している。有職故実(宮廷儀礼の作法)に通じ、かつ政治にも翻弄される様子が淡々とした描写の中にも浮かんでくる。どの時代も変わらないものだな...。2013/01/26