内容説明
怪僧か、傑僧か。女帝の寵を一身に集めて法王の位に上り、更に皇位をもうかがうに至った空前絶後の怪人物。当時の呪術の盛行と異常な崇仏の様を描いて、宮廷が魔術園と化していたことを明らかにするとともに、女帝治下の暗闘・陰謀を説いて道鏡登場の背景を解明し、秘術の深奥を衝く。古代史上の大きな謎をときほぐした快著。
目次
1 道鏡はなぜ問題となるか
2 道鏡登場の花道
3 河内の里
4 葛木山
5 人と愛情と性格
6 道鏡の政治
7 八幡の神託
8 晩年の道鏡
藤原氏系図
皇室系図
略年譜
参考文献
河内弓削地方略図
感想・レビュー
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:*:♪・゜’☆…((φ(‘ー’*)
2
好きでも嫌いでもない突き放した視点が特徴のこのシリーズにあって、良弁の弟子なのに道鏡には珍しく悪い印象を持った。天変地異飢饉疫病が続く時代でなかったら、勘違いして天皇になろうなどと思わなかっただろう。この時代のハイカラな宗教は、唐からの宗教と日本神道由来のシャーマニスティックな修行を組み合わせたもので偽物和製仏教。民衆もそしておそらく修行僧も仏教の本質を理解していなかったかららしい。孝謙天皇に施した宿曜(すくよう)秘宝もインド占星術の一種。本質を理解しないまま形だけ真似する。日本の癖だなあ。2019/02/08
鴨の入れ首
0
1959年刊(新装版は1988年刊)。図書館本です。従来、毒々しい伝説に彩られた怪僧として知られる道鏡ですが、その実像はあらゆる意味で限りなく平凡な僧侶であり、当時の陰謀渦巻く政界と日本独自の宗教観が彼を怪物に仕立て上げたのでしょうね。奈良時代の複雑怪奇な政治情勢なくして道鏡の栄光と挫折はありえず、当時も今も変わらない政界の伏魔殿ぶりを見せられました。読んでて興味深かったですね。2024/12/30