内容説明
旧守的な勢力と戦い、新たな時代を切り拓く「革命児」といわれた織田信長。近年の研究によってその人物像は揺らいでいる。信長権力はいかなる仕組みを通じて発揮され、そこにどんな人々が関わったのか。足利義昭に近仕した武家・公家の動向や、寺社・朝廷に関する史料を丹念に読み解き、信長権力の実態を解明。信長研究に一石を投じる注目の書。
目次
第1部 信長と同時代の人びと(室町幕府最末期の奉公衆三淵藤英;久我晴通の生涯と室町幕府;織田信直と「伝織田又六画像」)
第2部 信長と寺社(賀茂別雷神社職中算用状の基礎的考察;春日社家日記のなかの織田信長文書―大和国宇陀郡の春日社領荘園と北畠氏に関する史料;法隆寺東寺・西寺相論と織田信長;織田信長の東大寺正倉院開封と朝廷)
第3部 信長と朝廷(天正二年~五年の絹衣相論の再検討;天正四年興福寺別当職相論と織田信長;天正四年興福寺別当職相論をめぐる史料;天正九年親町天皇譲位問題小考;誠仁親王の立場)
著者等紹介
金子拓[カネコヒラク]
1967年山形県山形市に生まれる。1995年東北大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。現在、東京大学史料編纂所准教授・博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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MUNEKAZ
10
著者が示した一連の「伝統を重んじ、外聞を気にする」信長像の元ネタのような論集。書名から受けるほど大上段に構えた内容では無いが、興福寺別当相論や絹衣相論などを通して信長と天皇・朝廷との関係、公武共調の実態に迫っている。個人的には昨年の大河ドラマでも取り上げられた三淵藤英の評伝と、誠仁親王の政治的立場を考察した章が興味深かった。とくに誠仁親王は、織田政権が存続したイフを考えたときに、かなりのキーマンになるのではないかと思った。2021/06/21
相馬
2
東大史料編纂室准教授の著者が、新発見のものを含む史料を元に、信長の権力のあり方を考察した論文集。三淵藤英についての話も面白いが、中心は法隆寺東寺・西寺相論、興福寺別当職相論、絹衣相論をとおしての、信長と朝廷が抑圧対立的であったか、協力的であったかについての史料に基づいた考察。最近は後者の論が有力で著者もその立場にある。更にそれを踏まえて、馬揃え・天皇譲位問題、誠仁親王の立場を論じている。地味ではあるがいろいろと興味深かった。2015/08/16
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