内容説明
中世の百姓は、自らの主張や怒りをどのように表現しえたのであろうか。「ミミヲキリ、ハナヲソギ」という地頭の威嚇で知られる紀伊国阿弖(あてがわ)庄の片仮名で書かれた百姓申状を、国語学の成果なども導入して綿密に読み解く。中世の村と百姓の姿をいきいきと描き出すとともに、申状の書き手は誰か、なぜ片仮名で書かれたかを解明する。
目次
第1章 片仮名を読む
第2章 百姓のたたかいを見る
第3章 片仮名で書く
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gorgeanalogue
9
中世荘園史について何も知らないので、難儀した。もう少し紀伊国の荘園について概説が欲しかった。その意味では半分も読めてないが、それでもとても面白かった。この申状がまったく孤立したものではないことの論証、なにより片仮名表記についての網野義彦の「音声表記」説などの前説が周到な論拠で修正されるのは痛快。「虫愛ずる姫君」を持ち出して「片仮名は最初に習う文字だった」などとすることには一定の疑問は残る。それにしてもさまざまな政治的配慮を申状に込めた百姓のリテラシーには驚かされる。彼らは自分の世界を正確に認識していた。2023/11/03