内容説明
ふたりの男に求婚された美女。彼女は苦脳の末、入水自殺し、やがて人びとによって墓が営まれた―。この伝説を詠んだ『万葉集』の一連の歌の背景には、女性が「主体的」に生きえた時代から、そのような生き方がだんだんと狭められてゆく時代への移行があった。人名表記と各歌の内容の徹底分析により、古代婚姻の歴史的発展段階の変化を追究する。
目次
1 「処女墓」型伝説歌検討のために
2 「処女墓」伝説歌の人名表記の検討―歌の解釈の前提として
3 各歌の解釈―従来の説と相違を中心に
4 各歌の相違にみられる伝説の内容上の発展