内容説明
本書は、企業財務論における新潮流と現実に観察される企業の財務行動を意識して行われた,ここ数年の著者の研究をまとめたものである。とくに意識した現象として、1980年代にわが国で隆盛した転換社債の発行と公募増資、近年話題にのぼることが多い自社株買入れ、債務免除、債務保証、わが国で議論が始まったばかりの債務の株式化などがある。エージェンシー・モデルやシグナリング・モデルを用いて、これら諸現象の合理性を解明し、企業関係者にとっての意味づけを行い、さらには企業価値や株価への影響を分析したことが本書の特徴である。
目次
第1章 本書の目的と構成
第2章 株主と債権者の利害対立問題 リスク・インセンティブ問題
第3章 経営者と株主の利害対立と財務政策―フリー・キャッシュ・フローを巡る利害対立と転換社債の役割
第4章 経営者行動の規律づけと資本構成
第5章 経営者のエントレンチメントと財務政策
第6章 非対称情報下の資金調達行動―株式調達への傾斜と負債調達への傾斜
第7章 エクイティ・ファイナンスの情報伝達機能―公募増資と転換社債による情報伝達
第8章 自社株買いと株価の反応
第9章 担保資産運用能力と負債契約―グループ金融の合理性
第10章 企業の近視眼的投資行動―シグナリング・モデルとエージェンシー・モデル