内容説明
ホームレスやワーキングプア、ネットカフェ難民、日雇い派遣、孤独死や自殺など、福祉国家の制度からこぼれ落ち、呻吟する人々。彼らはなぜ、どのようにその拠り所を失ったのか。グローバリゼーションとポスト工業社会において、深まるばかりの社会分裂を、どのように分析するか。曖昧に使われてきた「社会的排除」概念を、社会参加と帰属に焦点を当てて、理論的にクリアに示し、データとフィールドワークを駆使して、日本の今のリアリティに迫る。
目次
序章 社会に参加するということ
第1章 「社会的排除」とは何か
第2章 社会的排除vs.貧困
第3章 社会からの「引きはがし」と「中途半端な接合」―路上ホームレスから見た二つの経路
第4章 若者と社会への「中途半端な接合」―ネットカフェ・ホームレスの場合
第5章 周縁―地域空間と社会的排除
第6章 セーフティネットからの脱落―福祉国家と社会的排除
終章 社会的包摂のあり方
著者等紹介
岩田正美[イワタマサミ]
1971年、中央大学大学院経済学研究科修士課程修了。大阪市立大学生活科学部助手、東京都立大学人文学部教授を経て、日本女子大学人間社会学部教授(社会福祉学専攻)、社会福祉学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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燃えつきた棒
30
難民に対する極端な鎖国政策(※1)、精神病院の病床数(※2)の圧倒的な多さ、自殺者数の多さ(※3)、これらのデータから見れば、日本は世界でも有数の排除型社会だと思わざるを得ない。 もしかすると日本は、外向きばかりでなく内向きにも門のある世界最大のゲーテッド・コミュニティなのかも知れない。 戦後、ずっと、アメリカさんの金魚のフンとしての生を嬉々として享受してきたのも、弱者から銃(≒権力≒金)で奪い、それを銃(≒権力≒金)で守るというアメリカン・システムが性に合っていたからではないか。2019/04/03
Olive
9
ホームレスとネットカフェ住人をめぐる調査事例から社会を見る。社会から引きはがされていく過程や、中途半端な社会との接合からの分離を分析する。一時は家族をもち年金に加入し、健康保険や雇用保険を払ってきた人たちがどのように社会から排除され、年金や保険の国のシステムから排除されていくのかを論じている。対策として、福祉国家の平等戦略や資源再配分だけでは不十分である。労働参加を積極的に位置づけ、従来の福祉ではない、労働を通じた福祉への転換という社会的包摂という概念を用いる。ここにも問題は多いのだけれども。。。2022/06/06
Yukiko
6
社会的排除論の教科書として読んだ。1990年代から日本でも路上生活者が多数現れて、研究者の問題意識が強くなり、日本の議論はこういうところまで進んでいるんだなと確認した。フランス語圏の議論も重要だと思うのだけれど、著者の守備範囲ではないので、欧文としてはジャン・ルノワールの「排除された者」ぐらいしかあげられていない。フランス語圏の研究者の紹介を補って読みたい。日本の社会を社会的排除の議論で分析しており、ホームレス、ネットカフェ・ホームレスに至る軌跡の分析はとても勉強になる。2015/11/16
水菜
6
普段はあまり立ち入らない社会コーナーで見つけた本。読んでると世の中もうだめだーという気がしてくるが、それでもこの現実を変えるために努力している人がいる。だから諦めてしまってはいけないのだと思う。労働参加による包摂の問題点には激しく同意。階層が下方に細分化されるような気がする。アセットベースの福祉というのははじめて知った。本にも書かれているが、日本の生活保護と比較するととても前向きな方法だと思う。こんな世の中はだめだーなんて言ってないで何かしないといけないんだなと感じる。2014/04/09
ぼっこれあんにゃ
4
◎ホームレスやネットカフェ難民などの貧困問題を社会的なつながりや、拠りどころからの断絶を示す社会的排除論から考察する著書。そもそも、外来語である社会的排除とは「主要な社会関係から特定の人を閉め出す構造から生み出された現代の社会問題を説明し、これを阻止して『社会的包摂』を実現しようとする政策の新しい言葉」とのこと。貧困はその弊害の一部に過ぎない。職も家もある生活から会社の倒産等ですべて失ってしまう転落型や、そもそも貧しい生まれで学校も出られず就職もできない長期排除型等、様々な事例を通して知ることができた。2013/12/28