出版社内容情報
理論から調査へと研究のストラテジーが移りゆくなか、いま学問はいかなる道筋をとりうるのか。再入門から、ステップアップまで。
内容説明
社会学はどこまで行けるのか?―因果推論から質的社会調査まで、現在の社会学の方法を社会科学の潮流のなかに位置づけ、AIを用いた統計的機械学習の可能性をも射程に、学問の針路をうらなう。
目次
第1章 なぜ因果推論なのか?
第2章 社会学における「質的調査」と「量的調査」
第3章 「社会変動の一般理論」から「質的社会調査」へ
第4章 媒介項としての「合理的主体性」
第5章 対面的・コミュニカティヴな質的社会調査の意味
第6章 人工知能による社会(科)学?
第7章 エピローグ―社会学の道を歩むには
著者等紹介
稲葉振一郎[イナバシンイチロウ]
明治学院大学社会学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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りょうみや
21
同著の「社会学入門」に続けて読む。社会学研究者を目指す人が対象のようで中級編らしい。専門用語が多いわけではないが易しくない。力学モデルや機械学習(人工知能)なども大いに絡めてきているところもおもしろい。前書に引き続き社会学を俯瞰して社会学は科学でありえるのかということと、経済学などの他の社会科学と異なる社会学のアイデンティティを探っている。それは危ういバランスの上に成り立っている。確かに社会学の大学院に進む前には読んでおいてじっくり考えておいた方がよい内容。2021/11/18
politics
5
中級編と銘打たれているが、もう少し難易度は高いかもと思わせる内容。社会学における質的・量的調査の相違を主な主題としつつも、因果推論や分析哲学、人工知能と様々な話題が盛り込まれており、これだけでも社会科学全般の勉強になるくらい。特に議論の下地となるデイヴィッドソンの言語哲学自体に関心が湧いた。社会学の研究者になる人は勿論、社会人でも質的調査等については有益なものと思われる。2021/11/23
awe
5
前著を読んだのは5年前くらいかな。更に難しくなってるんだろうと思って読んだが、手も足も出ないってことはなかった。しかしなんとも煮え切らない読後感。主に私の読解力不足が原因だが、もう少しだけ行間を省かずに書いてもらいたかった感。それは社会学の質的調査の必要性に関する議論(3章)についてだが、後述する。1章では因果推論に関する議論。科学と人文の間には伝統的な対立があり、それは、後者が人間の意味理解を前者が人間以外を対象とするという分業があるように見えるが、実際、人間も世界の中の事物である以上、自然科学的な2021/03/09
ぷほは
5
途轍もなく小さな門なのに、扉を開いて中に進めば何時まで経っても玄関にたどり着かない、そういう「入門」なわけだが、だいたいにおいて学問における入門書はそんなものだということはあったとしても、ここまで勢い任せな印象をもたせる本も珍しい。筒井・前田編(2017)への応答がいちおう主軸とはなっているものの、岸・北田ラインのデヴィッドソンへの突っ込んだ解説(4章)への読み応えもなかなかボリューミーだった。他方一番著者がのびのび書いていると感じたのは6章のAI論であり、逆に言えば入門としては些かニッチすぎたろうか。2019/05/01
Myrmidon
4
うお、ヘビーな内容だった。「社会学入門」とあるが、筆者自ら「意欲ある学部上級生や院生向け」と書くとおり、社会学の研究者予備軍向けの入門書。しかも内容は、代表的な理論の概説でも実践的なハウツーでもなく、ひたすら「社会学とは」「社会学が明らかにするものとは何なのか」「質的研究と量的研究の関係とは」のような非常に抽象的で理論的な話なので、実際、記述の半分くらいはそこそこ専門的な哲学(言語哲学、科学哲学など)の話。個人的には面白く読めたが、ここまで純粋に理屈くさい話を好むのは、社会学の学生でも稀じゃなかろうか。2019/06/07