内容説明
世界金融危機から教育改革まで、新自由主義下でリスク化の進む社会を貨幣の原理的なしくみから解読する。
目次
第1章 近代資本主義とは
第2章 資本主義の二〇世紀的変容
第3章 貨幣の考古学
第4章 市場と金融
第5章 恐慌の歴史とメカニズム
第6章 生産優位から金融優位へ
第7章 機能分化の再編―新自由主義的な教育改革の帰結
著者等紹介
正村俊之[マサムラトシユキ]
1953年、東京都に生まれる。1983年、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。関西学院大学社会学部助教授などを経て、東北大学大学院文学研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぷほは
6
具体と抽象の両立という良質な社会学の要件を満たしたクリアな小著だが、リーマンショックの分析はキャッシュレス化が進みビットコインや某youtuberの炎上騒ぎ等が話題となった2017年現在からはその「現代社会」性がやや薄れているようにも思われる。一方、宗教における供儀論から経済における貨幣論へと話をつなげる手法自体は社会学の伝統的なマクロ視点であり、ある意味ではそれらは全く古びていないともとれる。ただし、宗教ー経済ー教育などの諸機能の分化形態を論じる手つきがどうもパーソンズめいて見えるのは気のせいだろうか。2017/10/04
センケイ (線形)
3
貨幣の精緻な理論でタイトルの伏線を回収しつつ、経済の近年の動向と複雑性とをともに楽しませてくれる嬉しい一冊だ。貨幣の姿に宗教的な側面を重ねる点も大変興味深い一方で、それとの違いも明記されており好奇心が満たされる。また、現代の政治・教育の変容の主要因を必ずしも新自由主義だけにせず、情報化の結果でもあるとする点に、思わずはっとなった。貨幣の意味合いを一貫して軸に据えつつも、このようにさまざまなトピックを回収ていきながら、最後は生資本主義と認知資本主義との関連性も示す見事な締めくくりである。2018/03/31
クライバー
3
貨幣の機能を主軸に、社会に埋め込まれた経済の変遷から資本主義のダイナミズムを描いた意欲作。著者の論理への一貫性の追求が貫かれ重厚な作品に仕上げられている。2016/07/28
ヤンビー
0
生産優位から金融優位へと変貌した資本主義システムと、経済・政治・教育機能の融合化現象を、貨幣論を中心に分析している。 現代社会における貨幣論を最近調べていたが、本書は初学者にも分かりやすい内容で大変参考になった。 本書のポイントは、原始貨幣の有していた特性、聖俗を架橋し、人の見えざるものを可視化する宗教性に注目し、現代貨幣の強力な機能の説明を試みている点だと思う。 特にキリストと貨幣の類推が、大変興味深く印象に残った。 その他、サブプライム問題を引き合いにしたリスク社会論や、情報化社会論も含蓄深い。2024/10/06