内容説明
ある政治現象が起きた時、人はさまざまにその原因を推論する。その際、印象論ではなく、現状を客観的にとらえ、なぜその現象が生じたのかを経験的・実証的に分析するには、どのような作法に従えばよいか。一見、実証的にみえる分析の落とし穴に陥らないためには、どういった点に注意すればよいか。計量分析と質的分析に共通した方法とは何か。新たな理論・仮説を構築する方法とは?政治学のみならず、広く社会科学を学ぶ読者に向けて、身近で一般的な社会現象や政治現象を題材に、第一人者が軽妙洒脱に掘り下げて解説する。
目次
説明という試み
説明の枠組み―原因を明らかにするとはどういうことか
科学の条件としての反証可能性―「何でも説明できる」ってダメですか?
観察、説明、理論―固有名詞を捨てる意味
推論としての記述
共変関係を探る―違いを知るとはどういうことか
原因の時間的先行―因果関係の向きを問う
他の変数の統制―それは本当の原因ですか?
分析の単位、選択のバイアス、観察のユニバース
比較事例研究の可能性
単一事例研究の用い方
政治学と方法論
著者等紹介
久米郁男[クメイクオ]
1957年、大津市に生まれる。1981年、京都大学法学部卒業。1994年、コーネル大学大学院博士課程修了。神戸大学大学院法学研究科教授などを経て、早稲田大学政治経済学術院教授(政治学専攻)、Ph.D.(政治学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
110
政治学における理論的分析方法論で私はこの内容についてはかなりほかの分野でも利用できるのではないかという気になりました。ある意味日本にはない交渉学的な見地から読んでみると非常に面白い気がします。また企業における組織論にも応用できるのではないかという気がしました。2017/02/06
chanvesa
19
「ハロー効果」(116頁)は、よくある話で、気をつけないといけない。ビッグデータという言葉が前面に出ているとそれだけで統計的に正しいと信じてしまう。選挙の事前予想も昨今の高い精度で事前に発表されると、投票行動に影響が出ることが、さらに事態が深刻になっているような気がする。2017/10/28
izw
11
ある事象を説明するとは、その原因を探り、なぜその事象が生じたかを論理的に納得がいくように推論することである。相関関係があっても因果関係を確認することは難しいことはよく言われるが、政治学が対象とする事象は一回性が強いことが多く、その中で原因を特定しることはほとんど不可能に近い。その状況で研究を進めるためには研究方法そのものを洗練していかなければならないのだ、ということがひしひしと伝わってくる。政治学を対象に記載されているが、すべての研究分野に共通する方法論に通じる重要なスタンスを垣間見ることができる。2018/07/20
あんころもち
11
最近この手の本を色々読んでるが、最初に読むべき本はこれだし、色々読んだ後に手元に残しておくべき本もこれだと思う。因果関係を推論するための手法をざっと網羅し、それぞれのメリット・デメリットを分かりやすく紹介してくれてありがたい。2017/07/22
Haruka Fukuhara
9
冷静な記述で、なるほど政治科学者とはこういう文章を書く人たちなのか、と思った。よく覚えていないが学部時代に他大の先生なのにわざわざ読まされた気がして、年配の大家か故人かと決めつけていたらまだ若い(という程でもない:1957年生)先生で意外だった。大嶽の丸山批判が紹介されていてなるほどと思うと同時に、今でも政治科学の仮面を被った丸山的な精神の持ち主は多くてそれが政治科学の評判を下げている気がした。本当に価値に中立的な姿勢を貫くことが出来れば、政治科学も有用な分析ツールになりうると思えた。2017/05/08