内容説明
宗教改革時代の南ドイツ・アウクスブルクの豪商フッガー家は、遠隔地間商業、銀と銅の買占・販売、封建的権力者に対する貨幣貸付などの営みによって、巨万の富を築いた。フッガー家は、その財力にものをいわせて、皇帝選挙を左右し、カトリック陣営の資金源になった。
目次
アウクスブルク―フッガー家の町
フッガー家
富豪ヤーコブ・フッガー―H・ケレンベンツに拠る
アントーン・フッガー―G・F・フォン・ポェルニッツに拠る
フッガー会社の決算と財産目録
フッガー家の遺言状
フッゲライ(「貧者の町」)
フッガー文庫の沿革と現状
付録(フッガー家の城;三井文庫とフッガー文庫;フッゲライとベキーネンホーフ―福祉の源流をたずねて)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
25
フッガー家について興隆の歴史や豪商時代の事業を遺された財務諸表も使いながら解説した一冊。個人的にハプスブルク家への債権が貸し倒れて、あとは消えていったようなイメージだったが、実際は債権回収を諦めて事業を解散し、貴族として所領の経営・資産運用へ切り替えっていたということが知れて面白かったです。また、フッガー家に限らず当時の裕福な家が名目上は「魂の救済」を願って福祉施設(救貧院など)を整備し、町の一角を形成していた(政府ではなく民間で福祉を補っていた)ということも知れて今後の歴史書を読む助けにもなりました。2022/05/25
Honey
5
1989年発行。 大富豪とはどんなもの?その一例としての興味をもって読み始めたのですが、内容は意外なものでした。 本書は、アウグスブルクのフッガー家の遺した資料を丹念に調べ、ヤーコプ・フッガーを中心に、16~7世紀のヨーロッパの歴史:商業と王族・教会など権力者とのの関わり、一般の人々の生活など、いろいろなことをリアルに読み解いたものです。 権力者との面倒な付き合いをこなし、敬虔な信仰と弱者救済の精神で、フッゲライと貴重な記録を残したフッガー家に賞賛をおくるとともに、本書を著した諸田氏の仕事にも拍手! 2020/10/06