内容説明
教育論議が様々な形で展開されている今日、これまでのタブーに挑戦し、“きれいごと”として通用していた教育論を批判し、新しい視点で教育問題を語る、意欲的な書。
目次
序 教育問題ときれいごと
1 教育の主人公は誰か(国民の教育権か国家の教育権か;全国一斉学力テストをめぐる裁判;教科書検定をめぐる裁判;伝習館高校事件;いくつかの問題点の整理)
2 論争をふりかえる(歴史的背景;教育権論の中心的な流れ;議論のとびかう学者の世界;教育法学の方法をめぐって)
3 教育と自由(教育の自由は誰のものか;教師の教育権は憲法上の権利か;みにくい授業の実態にせまる;公教育への挑戦;教育行政のあり方を問いなおす;教育と自由主義―その歴史的とらえなおし)
4 学校における子どもの人権(子どもの人権をどうみるか;教育を受ける権利をとらえなおす;学習権をどうやって実現するか)
資料(日本国憲法の関連条文;教育基本法;学校教育法〈一部〉)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
katoyann
20
教育権の主体問題と保障問題について平たい言葉で説明した憲法学の本である。人権には状態権と行為権がある。状態権は、身体・精神・財産の状態を国家権力の干渉から保護する人権であり、行為権は自分の判断に基づき積極的に振る舞う人権である。大人はこの人権が基本的に保障されている。ところが、子どもの場合は自分の意思が自分の利益に合致するとはいえないこともある。タバコを吸いたいという意思は分かりやすい例だが、学校の勉強を拒否したいという意思は尊重されるべきなのか。著者はやらない自由もあるが、難題の一つとする。面白かった。2021/07/13