内容説明
有島武郎の生涯とその年譜的事実の中に鏤められた創作方法確立の契機と創作の媒材について、真摯・着実な研究で知られる著者がテキストに即して犀利に分析、創作と思想の核心、虚構と作家の実像との関わりのあり方を浮き彫りにした。有島への惜みなき愛の書かしめた研究論文集。
目次
1 有島武郎の創作方法(作家有島武郎の出発―『宣言』;離教追認と自立の表明―『迷路』 ほか)
2 作品研究(『カインの末裔』覚え書;『平凡人の手紙』覚え書 ほか)
3 創作活動の周辺(「大謀反者」と大逆事件―1910年、有島武郎の二つの暗鬱;『或る女』後編の成立―自筆原稿による二、三の考察 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
澄川石狩掾
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再読。 有島武郎研究の第一人者の一人である著者の論文集である。 「有島武郎の創作方法」では、『宣言』から『或る女』に至る創作方法の過程を論じ、『迷路』、「カインの末裔」で虚構という方法を確立したとし、「石にひしがれた雑草」、『或る女』は晩年の「詩への逸脱」に繫がるリアリズムの解体が生じているという。 「有島武郎の逝った日」では当時の気象台の記録などから、有島の自殺した日の天候を考察しており、「雷鳴や稲妻が浄月庵を包んだとすれば、それは「午前二時」を過ぎてからだったと思われ」は著者の執念の結晶である。2020/05/03
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