内容説明
芥川龍之介は絶えず芸術家としてのありようを意識していた小説家だが、意欲作「偸盗」の挫折が齎した苦悩は深甚なものがあった。―「偸盗」後「毛利先生」までのその創作を対象に、精緻に張りめぐらされた芸術的仕掛けに対する精緻な読みをもってして、テクストから立ちのぼる芸術意識の放射を体感し、その背後にある芸術家〈芥川〉の心たましいと創作表現の意味を探ろうとする、〈芥川〉への親愛の念を込めた研究。
目次
1 「さまよへる猶太人」「二つの手紙」「或日の大石内蔵之助」―〈噂〉の中の主人公
2 「戯作三昧」―芸術家意識の定着
3 「世之助の話」「袈裟と盛遠」など―視ること・視られること
4 「地獄変」―魔的なる暗渠
5 「開化の殺人」―自己の解体
6 「奉教人の死」―語ることと沈黙と
7 「枯野抄」―〈芭蕉〉とよばれた、〈大宗匠〉の臨終
8 「邪宗門」―その〈未完〉の意味
9 「毛利先生」―大正期文学の見る教師像の一面




