内容説明
戦後の日本考古学は戦前・戦中の考古学を根底から総括してきたか。日本考古学に内在する戦前的な負の遺産を顕在化させた戦後の考古学運動や「旧石器時代」捏造事件に光をあて、政治・経済・社会と考古学研究との関係性を明らかにし、研究者の主体性を問う。
目次
考古学における客観性とは何か(現象;形式 ほか)
日本考古学史研究の課題―戦後考古学の「第一の画期」から「第三の画期」を見据えて(学史研究の主流―日本列島における考古学史研究;日本考古史研究の伏流―日本人による考古学研究の歩み ほか)
地人たちの彷徨―1969.10.25京都・平安博物館(報道;前夜 ほか)
1970年代の考古学―そして「全ての発掘を中止せよ」(1970年代の幕開き;「関東考古学連絡協議会」と「全国考古学闘争委員会連合」 ほか)
「旧石器時代」捏造事件が意味するもの(事件史としての「旧石器時代遺跡捏造事件」;学術史としての「旧石器時代遺跡捏造事件」 ほか)
著者等紹介
福田敏一[フクダトシカズ]
1953年群馬県生まれ。東京都埋蔵文化財センター(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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おらひらお
3
2007年初版。個別の分野の研究が進む考古学ですが、考古学研究史として本書は目を通しておきたい一冊。学生さんにも読んでもらいたいですね。僕も遅まきながら手に取り、衝撃を受けました・・・。2023/06/25
Mentyu
3
学生運動と日本考古学の関係を扱う本や論文は少ない中、公判記録やアジビラなどをもとに当時の歴史を分析しようとする本書は非常に貴重なものである。編者が述べているように、この時代の考古学史を社会的背景から分析することは一種のタブーになっている。そうした中で、本書を出すことは本当に勇気がいることだろうと思う。学生運動の他にも旧石器捏造事件と考古学界の体質に関する論文を収録しており、社会の中の考古学を問い直す上では避けては通れない内容となっている。自浄作用を許さぬ徒弟制の学問だとこうも見せつけられると暗澹とする。2018/06/09