内容説明
福祉工学とは失われたり衰えたりした聴覚、視覚、発声、運動などの機能を工学的に支援する学問分野のこと。これまでに、人工内耳、人工声帯、触知ボコーダ、スクリーンリーダ、音声字幕システムなど、生活をする上で必要なさまざまな機器が生まれている。現在、高齢化が急速に進んでいる日本において、最も注目されている分野の一つ。緊急地震速報チャイムの製作にも、そのノウハウが生かされている。
目次
プロローグ 東日本大震災と緊急地震速報チャイム
第1章 ゴジラ音楽と映像音楽四原則
第2章 聴覚の不思議
第3章 音の福祉工学と聴覚の世界
第4章 伊福部達と蝋管再生プロジェクト
第5章 チャイム音の製作―課題と検証
第6章 福祉工学が秘める可能性
エピローグ チャイム音製作の三原則
著者等紹介
伊福部達[イフクベトオル]
1946(昭和21)年北海道生まれ。北海道大学大学院工学研究科修士課程修了。スタンフォード大学客員助教授、北海道大学電子科学研究所教授、東京大学先端科学技術研究センター教授を経て、北海道大学名誉教授、東京大学名誉教授、東京大学高齢社会総合研究機構特任研究員。専攻は生体工学、音響工学、福祉工学。工学博士
筒井信介[ツツイシンスケ]
1956(昭和31)年愛知県生まれ。大阪市立大学経済学部卒業。出版社勤務を経て(有)イデアを設立、現在にいたる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バニラ風味
14
あの地震の時に、何回も何回も繰り返された緊急地震速報の音。しばらくは耳に残って、また聞こえてきたような気がしてしまって。そんな地震速報の音が、どうやって作られたのか、という内容です。けっこう専門的な記述も多いですが、効果的な音にするため、いろいろな試験を繰り返したところが興味深かったです。裏打ちがあっての音楽には、やはりそれなりの効果があるのだと思いました。2016/08/30
Hiroki Nishizumi
4
なにかしら感心した。伊福部昭の四原則①状況の設定②エンファシス③シークエンスの明確化④フォトジェニーもそうであるし、エピローグのチャイム三原則もそうだ。世の中自分の知らないことだらけだなぁ2020/10/02
tuppo
4
文体と似たようなことだけど自分理論があるとまた愛らしい。伊福部昭が他の映画音楽の作曲家と違っていたのは映像につける音楽の機能を四つの原則に分類しその原則に則って音楽設計をしたことだ。その原則とは次の通り。和楽器や不気味なハーモニーなど状況の設定。映像とリンクし感情を強調するエンファシス。映像シーケンスの関連性を示すシークエンスの明確化。総合芸術を目指すフォトジェニー。2017/06/05
tom
4
地震のときにテレビから流れてくる警告音がどのようにして作られたかを説明する本。警告音そのものにメッセージ性を持たせるための条件、①注意喚起、②すぐに行動を誘発、③他の音と区別されること、④不快でも快適でもない音、⑤聴覚障害者にも聞こえること、これらを設定した上で、半年もいろいろ考え、実験も繰り返して、世に出ることになったとのこと。この部分はとても面白かった。ただし、前半と後段は、ほとんど不要。もっと面白い本にすることができるように思える残念本。2013/06/04
くまこ
4
福祉工学が専門の伊福部達教授のもとで、緊急地震速報チャイムが完成するまでのドキュメンタリー。教授の叔父、伊福部昭『シンフォニア・タプカーラ』第三楽章の冒頭部分の和音が素材となっている。複数のチャイム候補の楽譜が紹介されていて、視聴者に不安を与えず速やかな避難行動を促すためのメッセージが伝わるのはどれか、実験・検証していく過程が興味深かった。『シンフォニア・タプカーラ』はCDもあるし、動画サイトでも視聴可能。是非一度聴いてみると面白いですよ。2013/02/08