内容説明
「自分だけは大丈夫」そう考えている多くの登山者に警鐘を鳴らす、山岳遭難の非情の現実。
目次
高体温疾患の恐怖―沖縄・西表島
春の爆弾低気圧―八ヶ岳、谷川岳
10月のブリザード―北アルプス・白馬岳
吹雪にかき消えたルート―北アルプス・白馬乗鞍岳
スキーツアー中の雪崩事故―八甲田山・前嶽
冬山登山基地を襲った雪崩―北アルプス・槍平
ゴールデンウィークの低体温症―北アルプス・白馬岳、爺ヶ岳、穂高岳
被雷のち骨折―大峰山系・行者還岳、弥山
幻覚に翻弄された山中彷徨―大峰山系・釈迦ヶ岳
明暗を分けた分岐点―奥秩父・和名倉山
単独で山中を彷徨した8日間―奥秩父・飛龍山
著者等紹介
羽根田治[ハネダオサム]
1961年、埼玉県生まれ。フリーライター。山岳遭難や登山技術の取材経験を重ね、山岳専門誌「山と渓谷」や書籍などで発表する一方、沖縄、自然、人物などをテーマに執筆活動を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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HANA
66
「道迷い」や「滑落」、「気象」に「単独行」と著者がテーマ別にまとめている山の遭難事故シリーズはいずれも面白く読んでいる。本書はそんな著者が雑誌発表した事故のルポタージュをまとめた物。とはいえ冒頭の著者自身が遭難しそうになった体験から、爆弾低気圧や吹雪による低体温症、雪崩に落雷、山中彷徨の際に見た幻覚等、何れも読み応えは十分。個人的には幻覚の記録が一番面白く読めた。ああいう物を見るんだ。様々な体験が他山の石とすべく書かれているが、読んでいると山行くの怖くなってくるな。今年の冬こそ冬山デビューしたいけど…。2021/11/27
ビブリッサ
62
遭難の実例を検証・紹介している。中でも「幻覚に翻弄された山中彷徨・大峰山系、釈迦ケ岳」の項は、本人の手記が(太字の箇所は幻覚と推察)掲載されていて、次から次に幻覚が現れている。電話ボックスが三台並んでいる、古い石碑のある尾根筋に白い服を着た男が数人いる。尾根筋を下に向かうと建物の屋根が見え、嬉しさのあまり、下りていく道中で拾おうと思ってリュックを下に投げてしまう。そしてリュックはもう見つからない。男の声がして、登ると宿坊がある、泊めてもらえと言われる。2017/06/04
NADIA
57
表紙のイメージが似ていたため、先月『単独行』の感想を間違えてUPしてしまった。今回は間違いなく!! いろいろなケースの遭難が取り上げられているが、何より第1章の著者・羽根田さんのケースが印象深い。プロ中のプロでもそのような遭難一歩手前状態になりうるということは、どんな山登りの達人でも常に遭難の危険があるということだ。山で遭難と言えば低体温症と相場が決まっているが、羽根田さんは西表島で高体温疾患だった。なるほど、寒くても暑くても危ないと大変勉強になる。 2022/09/03
マリリン
51
遭難の実例が書かれている。写真こそ少ないが、かなりリアルに書いてあり、その原因について掘り下げて検証記録と共に論考も書かれているのがよい。熱中症や脱水、低体温症やケガに至る経緯が興味深い。油断や過信が遭難を引き起こす。特にスキーツアー中八甲田山でおきた雪崩事故の欠落していたリスクへの備えは、山中に限った事ではない。被雷のち骨折・幻覚に翻弄された山中彷徨・明暗を分けた分岐点・単独で山中を放浪した8日間等は、入山姿勢を問われたと同時に文字を置き換えればそこには日常生活がある。サバイバルには体力が必要。2021/01/18
あんこ
26
山には登らないけれど近くに登る人がいるので興味深く読んだ。大量遭難の事例は痛ましいし、生還したご本人の手記も読み応えあった。幻覚を見ながらさ迷うとか、怖すぎる。山に登る方々には十分注意してほしいと思った。待ってる家族がいるのだから。2019/05/05