出版社内容情報
渡り、寿命、そして危機――100年続いた調査からわかる、野鳥の興味深い最新の生態を紹介。
「毎年来るツバメは同じツバメか?」「小鳥も案外長生きする」「スズメの数が減っている」――本書では100年続いた調査から明らかになってきた興味深い鳥の生態を紹介。鳥に足環などの標識をつけて放す「鳥類標識調査」では、渡り鳥はどこから来てどこへ行くのか、鳥は何年生きるか、身近な鳥の数が減っているなど、様々なことがわかります。本書では、日本で唯一の鳥類研究所「山階鳥類研究所」の専門家が、この鳥類標識調査からわかったことを解説しました。
絵本作家・鈴木まもるによるイラスト解説付き
内容説明
私たちは、鳥のことを、どこまで知っているだろう。小さな印を追跡してわかった鳥たちの不思議な生態。
目次
1章 渡り鳥が世界をつなぐ(鳥の「渡り」ってなんだろう;鳥の長距離移動チャンピオン ほか)
2章 鳥はどれくらい生きる?(毎年来るツバメは同じツバメか;長生きする鳥たち ほか)
3章 鳥たちにせまる危機(激減するカシラダカに何が起きている?;スズメの数が減っている ほか)
4章 標識調査でわかる、あんなことこんなこと(雄か雌か?成鳥か幼鳥か?~性別や年齢と、標識調査~;多くの情報を秘めた足環つきの収蔵標本 ほか)
鳥類標識調査について(鳥類標識調査100年の歴史;世界各国の鳥類標識調査 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
79
(2024-171)【図書館本-116】日本で鳥類標識調査が始まって100年、その成果をまとめたもの。軒先に巣を作るツバメを見て「今年も来てくれたなぁ」と思うが、同じツバメかどうかは標識をつけて個体識別をして初めてわかる。実際翌年戻ってくるのは1/4程度で、同じペアを組むのはもっと少ない。更にびっくりしたのは冬になると見かけるユリカモメ、実は東京のユリカモメと福岡のユリカモメは出身地が異なる。東京はカムチャッカ半島生まれで、福岡はシベリア生まれなのだそうだ。目から鱗のことが多い一冊でした。★★★★★2024/11/21
今庄和恵@マチカドホケン室コネクトロン
22
ツバメを始めワタリをする鳥を見るたび「こんな小さな体で過酷な旅を」とむせび泣いてしまう。足環による調査が100周年とのこと。100年のデータが教えてくれる地球の状況。長距離移動チャンピオンはオオトウゾクカモメの南極から北海道への12000キロですってよ!足環を鳥に装着する人のことを「バンダー」というそうで、全国でわずか400名。捕獲して足輪を装着、捕獲したものには当然既に足輪を装着されているものもいる、その足環のデータこそがお宝。「標識調査を通じて生物多様性保全の大切さを広く社会に伝えたいが、こういった→2024/11/27
k sato
21
足環をつけた野鳥を、私はまだ見たことがない。1924年から続く野鳥の標識調査。山階鳥類研究所の100年史に感銘を受けた。戦争や予算削減による中断はあったが、2022年までの62年間で、のべ651万羽を放鳥し、4万羽を回収した。調査から分かるのは、野鳥の寿命や渡りの足跡だけではない。個体群の増減や病原体の移動といった情報も得られる。ベニアジサシが21齢、アオジが14齢まで生きた記録には胸打たれた。渡り鳥を追跡すると、フーテンの寅さんみたいに脇道に逸れる個体もいる。足環になって、渡り鳥の一生に寄り添いたい。2024/12/31
shiman
13
数ページのコラムを集めたような編集が読みやすく楽しく読み始めたのですが、やはり生息数減のデータ主体の記事が後半は多くなってきてだいぶ流してしまいました。蕪島はすごかったです。つつかれるの覚悟の上なら素人でも雛にバンドつけられそうでした・・・・2024/12/21
ろべると
12
渡り鳥に足環を付けて動きを調査するのは、とても足の長い活動だ。でも地道な調査によって、アラスカ北部から日本にやって来るシギの仲間がいることも、海鳥の寿命が比較的長いこともわかる。国を跨いで渡るので国際的な連携が必要で、少なくとも以前は北朝鮮の研究者との交流もあったそうだし、ロシアとの協力なくして十分な調査は得られないだろう。毎年北極から南極まで往復する鳥なんて感涙ものだし、毎年やって来るツバメのほとんどが入れ替わっているというのもびっくりだ。まだまだ未知なことの多い鳥の世界を是非もっと明らかにして欲しい。2024/12/09