内容説明
高校生ら8名が死亡、40名が重軽傷を負った事故の全貌が明らかになる。
目次
第1章 十四人の隊列
第2章 消えた痕跡
第3章 真実を知りたい
第4章 隠された雪崩事故
第5章 弱層は板状結晶(中村一樹)
第6章 雪崩発生
第7章 救えなかった命
第8章 生存生徒の証言
第9章 銀嶺の破断
第10章 親の願い、少年の夢
著者等紹介
阿部幹雄[アベミキオ]
1953年、愛媛県松山市生まれ。北海道大学工学部卒。中国の高峰で8人が滑落死する遭難(1981)で生き残り、長年にわたり遺体の捜索収容を行なってきた。新潮社の写真週刊誌『FOCUS』の契約記者としてソ連崩壊や自然を題材にした連載を掲載。2003年から北海道テレビ放送HTBの契約記者。第49、50、51次南極観測隊隊員(2007~2010)。山岳地帯でテント生活をする地学調査隊のフィールドアシスタントとして研究者を支え、安全管理を担当した。仕事のかたわら、雪崩教育や山岳救助に関するボランティア活動を行っている。雪崩事故防止研究会代表、日本雪氷学会雪氷災害調査チーム前代表(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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♡ぷらだ♡お休み中😌🌃💤
41
2年半ほど前の高校生ら8名が亡くなった痛ましい那須雪崩事故は記憶に新しい。栃木県教育委員会設置の検証委員会、引率の先生や生存生徒たちからの聞き取り、雪氷災害チームの調査などからその事故の真相に迫る。この事故は、訓練内容や地形・気象などの雪崩知識不足、事故が起こった際の連絡方法の徹底不足など人為的な要素が大きいと感じた。2度と同じ悲劇が起こらないように願わずにはおれない。著者は、ミニャ・コンガで8名が滑落死した遭難の生き残り。「山へ行くものは、生きて帰らなければならない」という言葉はずっしりと重い。2019/08/13
ZUSHIO
8
登山経験者として、部活動顧問として身につまされる思いで読んだ。確かに3人の教員の責任は重いし、亡くなった8人の遺族の気持ちを慮れば実刑判決やむなしという気もしないでもないが、やはり部活動顧問という制度そのものの限界を象徴する事件だとも思った。自分を含む生徒の死の危険性を常に孕むような「業務」を部活動という本来業務ではない法的にはボランティアである顧問に押し付けるのにどうしても違和感を感じる。これで3名の教員に全責任を押し付けても構造的に教育機関が変わらなければ、また同じような事故は起こりかねないと思う。2024/06/28
ふたば
7
雪崩による事故は、過去から現在まで何度も発生し、多くの命を奪ってきた。雪崩の研究、雪や氷の研究は進んでいる。雪山に弱層が存在することを彼らは知らなかったのか。何故、すぐにできる弱層試験を行わないのか。何故、ゾンデも十分なスコップも、ビーコンも持たずに雪山に入るのか。雪崩からの救出訓練を行わないのか。海外の高山を経験していたはずの教員さえも、そこに思い至らなかったのか、と残念でならない。登攀技術を競うことも大切だ。しかし、もっと必要な知識、技術があると思うのだが。2019/08/19
Meistersinger
7
「再発防止のために、どのような教訓が得られるのか?」に興味があった。事故時の指導者だった教師たちから証言を得られず、その点は不満が残る(特に携帯電話で即時に救援を求めなかったことや現場での救出行動の遅れ)。気温変化から弱層といわれる雪崩が起こりやすくなる不連続層が出来ていた可能性が高かったことや雪崩のコースになりやすい場所を選んだことなど、指導者の判断ミスが主原因と思われるのだが。過去に起こった雪崩事故(被害は軽微)が報告されてないことを考えると、雪崩リスクを軽視していた可能性がある。2019/07/14
100名山
7
主要な当事者から聞き取りができていませんが、要点を押さえた力作だと思います。以前の雪崩体験をないがしろにし、地図で確認もせず訓練地域を口頭で合意し、、信頼関係のない講師の引率の許、雪崩に高校生を巻き込んだ指導者たちの責任は停職ぐらいでは遺族は納得できなと思いました。根底にあった高体におけるライバル意識も、著者が記すように管理者に責任があると思います。2019/07/12