内容説明
飛ぶ、はじける、流される。動物を利用し、世界を旅する。ときには踏まれ、焼かれ、100年もの眠りからさめる―。時空を超えるタネの大冒険と生命のふしぎ!小さくて大きなタネの世界へようこそ。
目次
1 タネの冒険(はじける―カラスノエンドウ・ヤマフジ・スミレ;風に乗って―クロマツ・タンポポ・オオアレチノギク;水に流れる―ハマシオン・ミズバショウ ほか)
2 タネの目覚め(芽生えるタイミングをはかる―ハマゴウ・ハコベ;春に芽生える―ブナ・サクラソウ・オオブタクサ;秋に芽生える―アレチノギク・ノアザミ・ナズナ ほか)
3 宝さがしゲーム(土壌シードバンクとは;シードバンクを見つける)
著者等紹介
鷲谷いづみ[ワシタニイズミ]
1950年東京生まれ。理学博士。筑波大学を経て現在は東京大学教授(農学生命科学研究科)。植物の生活史の進化や生態系の保全について研究しながら、各地の環境保全や環境教育の活動などにも提言をしている
埴沙萠[ハニシャボウ]
1931年生まれ大分県出身。作家でシャボテン研究家の龍胆寺雄に師事。東京農業大学に沙漠植物研究室を創設。企画設計を担当した伊豆大室山シャボテン公園に、沙漠植物研究室およびコレクションを移転後、山口県大郡に移り住んでシャボテンの研究生活を送る。68年より郷里大分で植物の生態写真家として活動をはじめる。現在は群馬県北部に移り住んで、雪の降る地帯の植物の撮影をつづけている
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やすらぎ
166
綿毛が舞う、莢から弾ける、水に流される。いかに種を遠くへ運ぶか工夫された植物の形が躍動する瞬間を、埴沙萠さんが貴重な写真に収めている。風や海や鳥、地球全体の生命の循環。遥か昔に大地に降りて眠った種が、雨上がりの青空の下で目を覚ます。大きなドングリをせっせと運んでくれる生き物もいる。深く根を伸ばして栄養を集めて芽生えの時を待つ。やわらかな土の上、暖かな潤いのある状況を慎重に把握して、透き通るほどに純真な双葉を広げる。植物の果てしない世界へ。もしかしたら足元の土に、絶滅危惧種のタネが眠っているのかもしれない。2023/12/23
たまきら
40
読み友さんの感想を読んで。フルカラー、とても美しい植物の様々な戦略を紹介している本です。知識として知っていても実際には見たことのなかった様々な散布の様子、満喫しました。いや~これは面白かったです。あと、当然かもしれませんが宿れなかったヤドリギの末路…初めて写真で見ました!2024/03/31
とよぽん
25
一粒の種には宇宙が詰まっている。まず、表紙がすごい。ヒノキの芽生えに結ばれた一滴の露、千載一遇の瞬間を撮って見せてくれた。写真家の埴沙萠(はに・しゃぼう)さん、そして文は農学生命科学を研究する鷲谷いづみ博士。お二人のタネに対する愛が、この1冊に凝縮されている感じがする。甲斐信枝さんの絵本にも、タネのことを描いた作品があるが、本書は写真の力が圧倒的で学術書の趣きが強い。自然の摂理というものに改めて気付いた。2019/08/22
猫
11
図書館本。タネの生存戦略をわかりやすくまとめた本。とにかく遠くにタネを運ぶ、発芽の適切なタイミングを見極める、そんな目的一つにも多様な方法があって、置かれた環境によってそれを選択して進化してきた命の不思議に圧倒される。生き抜いて命を繋ぐことに必死なのは、植物でも動物でも変わらない。このシリーズ、写真がどれもかなり美麗で、写真集としても楽しめそう。2019/06/29
竜王五代の人
8
手足も目鼻もない植物の種子だけれども、風や水、動物を利用して移動し、温度や光を感じ取って反応したり、あるいは休眠を続けたりする様子が豊富な写真とともに語られるおもしろい本。また、土の中には凄い数と種類の種が埋もれており、シードバンクと呼ばれるとか。2025/04/18