内容説明
日本一クジラを解剖してきた研究者の七転八倒の毎日。海の哺乳類の知られざる生態に迫る!
目次
1章 海獣学者の汗まみれな毎日
2章 砂浜に打ち上がる無数のクジラたち
3章 ストランディングの謎を追う
4章 かつてイルカには手も足もあった
5章 アザラシの睾丸は体内にしまわれている
6章 ジュゴン、マナティは生粋のベジタリアン
7章 死体から聞こえるメッセージ
著者等紹介
田島木綿子[タジマユウコ]
国立科学博物館動物研究部脊椎動物研究グループ研究主幹。筑波大学大学院生命環境科学研究科准教授。博士(獣医学)。1971年生まれ。日本獣医生命科学大学(旧日本獣医畜産大学)獣医学科卒業。学部時代にカナダのバンクーバーで出合った野生のオルカ(シャチ)に魅了され、海の哺乳類の研究者として生きていくと心に決める。東京大学大学院農学生命科学研究科にて博士号取得後、同研究科の特定研究員を経て、2005年からアメリカのMarine Mammal Commissionの招聘研究員としてテキサス大学医学部とThe Marine Mammal Centerに在籍。2006年に国立科学博物館動物研究部支援研究員を経て、現職に至る(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
147
面白かった。著者は国立博物館で主に海棲哺乳類を研究している。海棲哺乳類とはクジラやアザラシ、オットセイなど。それが海岸に漂流あるいは漂着の情報を得るとそこへ行って大きいものはその場で解体したり、骨格標本のするため砂浜に埋めたりすることになる・この一連の解剖という工程がとんでもなく臭いということがよく分かる。例えば家の中で小さな魚が腐乱していてもあの臭いだから。クジラ、それもシロナガスクジラは体長30m近くになるという。それくらいのものなると標本はアメリカの場合飛行機の格納庫に入れるという。読み応えあり。2022/04/01
きみたけ
134
著者は国立科学博物館動物研究部研究員で獣医の田島木綿子氏。これまで雑誌の寄稿や監修、「世界一受けたい授業」「NHKスペシャル」などのテレビ出演や講演の依頼も多数。日本一クジラを解剖してきた研究者による科学エッセイ本。なぜ海岸に打ち上がるのだろう、それが知りたくて一つ一つの死体から聞こえる声に耳を澄まします。田島先生の純真な想いに心打たれました。プラゴミが海獣に与える悪影響に心痛めます。ストランディングなる言葉は初めて聞きましたが、今後もし海岸でクジラやイルカが打ち上がっていたらすぐ先生に連絡しますっ😅2022/01/26
けんとまん1007
126
クジラ、シャチなど海獣に関する、とても興味深い内容で、ページをめくるスピードが、どんどん速くなった。以前、読んだ「キリン解剖記」にも通じるものを感じた。大胆に、特には細心の注意を払っての奮闘ぶりが、目に浮かぶ。読んでみて、改めて、ほとんど知らないことばかりだと痛感。それでも、まだまだ、わからないことが多いのが生物の凄いところ。しかし、マイクロプラスチックのことは、本当に残念で、対策を考えていかないといけない。2021/10/13
R
102
好きを仕事にした人の奮闘記は読んでいるだけで楽しい。女性博物館人である著者が、日本各地に打ち上げられるクジラ等を調査する日々や、意義を面白く、わかりやすく解説した本でした。海獣が打ち上げられることをストランディングと呼ぶそうで、日本では年間300件くらい通報があり、その都度回収や調査のため、過酷な現場へ駆けつけていく姿が描かれている。大切な仕事でもあるし、とても素晴らしい活動なんだが、それ以上に好きという熱量が高くてよかった。研究とはこういうことだと、活動すべてを肯定したい気分になった。2021/11/03
どんぐり
101
日本の海岸にストランディング(漂着)する海の哺乳類の解剖調査、標本作りを行う研究者のリポート。国内で発生するストランディングは年間300件ほど。北は北海道から南は沖縄まで海岸に海獣が打ち上げられたという報告があれば、クジラ包丁にノンコを携え、ストランディング調査に向かう。その調査たるや現場での腐敗臭対策と超ガテン作業の汗まみれ。そこからストランディングの謎を追うとともに、海の食物連鎖の頂点に位置するクジラやイルカから発見されるプラスチック片などの残留性有機汚染物質(POPs)の問題も紹介している。→2022/07/22