内容説明
田部重治は、『日本アルプスと秩父巡礼』(のち『山と渓谷』)で、日本ならではの美わしい渓谷と深林の山旅とともに、登山に伴う自らの内面変化を描き、登山界に大きな影響を与えた。英文学者として、自然や文化に対した自己の精神の在り様を探り続けた山旅は、高原へ、峠へ、街道へ、山村へと、領域を拡大しつつ、独自の道を歩む。本書は、田部重治の「峠と高原の時代」を概観することを意図し、今では失われた大正~昭和初期の山村や自然の姿を描いた紀行を中心に、著者の精神の軌跡を記した随筆を含め四十四編を収めた。
目次
大菩薩峠の秋(昭和五年)
美ヶ原と霧ヶ峰(昭和五年)
麓の宿(昭和五年)
秩父の三峠(昭和五年)
三国峠(昭和五年)
鹿沢温泉より大門峠へ(昭和六年)
信濃追分と追分節(昭和六年)
五日市より氷川へ(昭和六年)
神津牧場より黒滝不動へ(昭和六年)
高原(昭和六年)〔ほか〕
著者等紹介
田部重治[タナベジュウジ]
1884(明治17)年、富山県生まれ。東京帝国大学英文科卒業。ペイター、ワーズワース研究で知られ、海軍経理学校、東洋大学、法政大学などで教鞭をとる。二十代から三十代にかけて、木暮理太郎らと行なった北アルプス、奥秩父での先駆的登山で名高い。とくに1919(大正8)年、慶應義塾山岳会での講演「山は如何に予に影響しつつあるか」で表明した静観的な登山姿勢は登山界に大きな影響を与えた。日本山岳会名誉会員。1972年歿(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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