内容説明
ひそやかに光るきのこ、きのこ毒殺人事件、シマリスは胞子の運び屋…きのこ学の第一人者が世界中のきのこを取り上げながら、きのこの不思議な生き方と生態系での重要な役割、きのこと人が長年繰り広げてきた悲喜こもごもについて語る魅惑のきのこエッセイ。つくばの研究所に向かって下駄ばきで自転車をこぎ、筆をとってはニコニコときのこの絵を描き、時には人にあげて喜ばれていた。知る人ぞ知るきのこ博士の著書を初めて文庫化。
目次
きのこの形、きのこの成長
毒きのこ、薬になるきのこ
胞子の世界
菌糸・菌根のこと
きのこの栄養のとり方
きのこの分布・きのこの生態
著者等紹介
小川真[オガワマコト]
1937年、京都生まれ。1962年に京都大学農学部農林生物学科を卒業、1967年に同大学院博士課程を修了。1968年、農林水産省林業試験場土壌微生物研究室に勤務、森林総合研究所土壌微生物研究室長・きのこ科長、関西総合テクノス、生物環境研究所所長を歴任。農学博士。「森林のノーベル賞」と呼ばれる国際林業研究機関連合ユフロ学術賞のほか、日本林学賞、日経地球環境技術賞、愛・地球賞、日本菌学会教育文化賞受賞。2021年、没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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帽子を編みます
66
きのこのあれこれが書かれています。一般にイメージされるきのこ(地上にある傘と軸のあるあれです)、だけでなく地面の下の菌根を採取して培養していく話、研究者ならではだと思います。著者自身のスケッチ、記録写真などが入ってわかりやすくキノコ学に親しめます。著者は巻頭の新装版によせてで、きのこの現状についての不安、警告を述べていますが、それからさらに四半世紀たちました。自然のきのこたちもさらに変化していそうです。きのこと樹木の共生関係、きのこと動物との係わり、大きな循環に思いをはせます。ああ、きのこよ!2022/04/15
とんかつラバー
15
年配の人は「昔はマツタケなんか珍しくなかった」と口をそろえて言う。松林が減ったのもあるが、ガスや電気で炭を使用しなくなったのも要因だ。人間の生活様式の変化も大きな影響を与えている。菌類は食べ物としてだけでなく、分解者として重要な存在である。木だけ植えても育たない(日光や肥料はあるのに)菌類は植物と不思議な共生関係にあって、植物の成長には菌類が必要。お互いなくてはならない関係で、後から出てきた人類なんかががその仲に割って入ろうというのもおこがましいのだ。2023/05/16
朝ですよね
6
キノコ博士のエッセイ集。きのこは目に見える数少ない微生物の一つ。ハエやリスに運ばれて胞子が広がるというのは植物のようだが、菌根菌として植物と共生したり有機物を分解する姿は紛れもなく菌である。マツタケはマツの根と共に円形のシロを作って広がり、どちらかと言えば痩せた土を好む。肥沃な土地だと他の微生物に駆逐されてしまう。著者ですらトリュフ料理は2度しか食べたことがないらしい。生き物の本質的な理解は徹底した自然の観察で得られるものであり、高級食材として持て囃すようなこととは違うのだなと感じた。2022/04/20
mft
4
きのこの様々な話、生息環境、胞子の拡散方法、共生・腐生、毒、味、季節、シロ etc. 最初に出版されたのが1983年、新装版が1997年、この文庫が2022年なので、現在から見ればもう少し判っているよという内容もあると解説にあった。菌根菌の生育環境は共生している木の生育環境でもあり、無理して本来と違う環境に木を植えると枯れたりするのは病原菌にやられるからばかりではない2024/12/15
ミルフィーユ
4
きのこが何か神秘的な生物に思えてきて、きのこをみる目が変わる。2022/06/13