内容説明
怪奇幻想文学専門のアンソロジストとして知られる東雅夫の編纂による、文豪たちが遺した山の奇譚集。「千軒岳にて」(火野葦平)、「くろん坊」(岡本綺堂)、「河原坊」(宮沢賢治)、「鉄の童子」(村山槐多)、「薬草取」(泉鏡花)、「魚服記」(太宰治)、「山人外伝資料」(柳田國男)ほか全12作。巻末に、編者解説収載。
著者等紹介
東雅夫[ヒガシマサオ]
1958年、神奈川県生まれ。雑誌「幻想文学」(幻想文学会出版局/幻想文学出版局/アトリエOCTA)の編集長を創刊から終刊まで務める。その後、文藝雑誌「幽」(メディアファクトリー/KADOKAWA)の編集長と編集顧問も、創刊から終刊まで務めた。そのかたわら怪奇幻想文学専門の研究者・評論家としても多方面で活躍。アンソロジストとして、埋もれた作品の紹介も数多く手がけている。代表作に日本推理作家協会賞を受賞した『遠野物語と怪談の時代』(角川選書)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sin
69
人は山に惑う!文人は山に眩み、杣人は山を畏れる。さて、葦平・河童飛ぶファンタシー。貢太郎・狐狸の業?綺堂・人の驕りが…。賢治・清明なる幻視。平四郎・鉄の調伏。菊地・判別し難い文体。槐多・戯言。蘆江・道行の怪。鏡花・亡母への憧憬。大宰・「おめえ、なにしに生きでるば。」自問自答か!?勘助・夢幻の世界。柳田・山人と云い少数民族を考察す果ては縄文人を視たか、案外現代風に当時のホームレスやも?2021/07/04
たま
38
何気なく読み始めた選集だが、先日読んだ小松和彦『聖地と日本人』と繋がり面白かった。深い山を一人行くときの心許なさが怪談を生むとして、その背景には小松さんが描く山=霊場・異界という伝統的認識があるに違いない。雨月物語の白峯(崇徳院と西行)から説き起こす編者解説も、柳田国男「山人外伝資料」も参考になった。鏡花を初めとする11篇、いずれも面白いが、火野葦平、岡本綺堂の文章に驚き、村山槐多、中勘助のイメージに百閒を、太宰の津軽の山に石牟礼道子の熊本を思い、この分野に暗い私には興趣が尽きない。2021/10/28
HaruNuevo
6
ヤマケイ文庫は山怪シリーズが秀逸なので期待していたが、これは自分の趣味には合わなかった 図書館で借りた本だったけど、書店でパラパラ捲ってたら間違いなく買わなかったろう2022/08/08
くろばーちゃん
6
山を舞台にした、いろいろな作家の不思議な話が楽しめた。特に村山塊多の「鉄の童子」と平山蘆江の「鈴鹿峠の雨」と泉鏡花の「薬草取」と柳田國男の「山人外伝資料」がよかった。2021/10/01
よみとも
5
文豪たちによる山の怪談・奇談を集めたアンソロジー。安定の岡本綺堂・泉鏡花は言わずもがな、火山に空飛ぶ河童という異色コラボの「千軒岳にて」(火野葦平)、死者の書を思い出した「河原坊」(宮沢賢治)、あの三行だけでおぞましい話に変貌する「魚服記」(太宰治)が印象的でした。さらに巻末の柳田國男「山人外伝資料」がよかった。山人は日本の先住民である、という説は学説としては未熟だったかもしれませんが、その語り口には文学的な想像力を掻き立てる熱があります。東雅夫さんの解説も読みごたえありました。2024/04/01
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