内容説明
―マタギの里・阿仁で私は豊かな思いしかしたことがない。人工物にあふれて人もモノも金も激しく動く都心部は確かに豊かなのかもしれないが、阿仁とはだいぶ質が違っている。すべてを周りの山々から集めて衣食住を賄ってきた先人たちの遺産を受け継ぎ、楽しみも与えられるのではなく自分たちで創造する。自分たちとは無縁の人や社会に振り回されることなく生きてきたマタギの名残が、私には心地良かったのかもしれない―(本書より)。
目次
1 マタギ―矛盾なき労働と食文化(マタギとの邂逅;熊のけぼかい、熊の味;雪山のウサギ狩り;冬の川で漁をするマタギ;マタギと渓流とイワナ釣り ほか)
2 マタギとは山の恵みをいただく者なり(マタギ食堂へようこそ;雲に隠れた熊がもたらす恵み;マタギのメシから生まれた郷土料理;“忍び”で獲ったウサギを食す;マタギと犬とキノコ採り ほか)
著者等紹介
田中康弘[タナカヤスヒロ]
1959年、長崎県佐世保市生まれ。島根大学農学部林学科、日本写真学園を経てフリーカメラマンに。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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パトラッシュ
71
マタギとは矢口高雄の漫画でしか知らなかったが、あれも実際とは大きくかけ離れた創作だと痛感させられる。専業とする者がおらず後継者がいない絶滅確定種で、魚や山菜採りも兼ね犬はほとんど使わないなどイメージと全く異なる。マタギの老人たちが熊を解体する場面は強烈なほどで(カラー写真が欲しかった)、わずかに生き残った「何でも自分でせねばならない」山の民の暮らしを伝えてくれる。平凡な平地人でしかない自分にとって、ただ戦慄するのみの書だ。彼らと四半世紀を共に過ごした著者にしか書けない、第二の『遠野物語』の誕生といえよう。2021/07/12
たまきら
27
既読の本二冊を合わせたもので、どちらも読んでいる人間にとっては「え~カラーじゃないんだ…」ですが、写真が怖い人にとってはこういう本のほうがいいのかもしれないな。重いのが嫌な人とか。2021/07/23
とんかつラバー
11
漫画で超人的な能力を持ったヒーローとして描かれる事の多いマタギだが、実像はどうなのか?熊を撃つ猟師のイメージだが、兎や鹿も撃つし、川で釣りもするし、キノコも獲る。ありとあらゆる自然を糧とする術に長けた人々である。また独自の調理法も興味深く、酒飲みにはたまらない(我々が知るキリタンポはまがい物だった!)2冊分をまとめた文庫となっていてかなり分厚いが、スラスラ読めて面白かった。25年以上に渡って取材を続けた筆者、それに応えたマタギの人々に脱帽である。2021/07/01
みかん
5
昔読んだアイヌ民族の熊の話『クマにあったらどうするか』とは違う部分もあれば一緒のところもあり、興味深かった。ただ、こういう本はいつも失われる伝統の話ばかりになってしまう。もっと早く生まれていたら、読書体験も違ったのだろうか。子供の頃の原体験があるかどうかは重要だと思った。2023/08/13
Hisatomi Maria Gratia Yuki
5
マタギのさまざまな技能や文化に目を見張る。そして犬はあまり使わないなど、意外な事実もたくさん。もとが枻出版から出ていた本を合本にしたそうだが、あまりにヤマケイ的な本。どういった経緯でこの本が枻から出ることになったのか、興味が湧いた。2021/09/22
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