内容説明
白神山地を跋渉した“目屋マタギ”の“シカリ”鈴木忠勝の言葉を通じて綴った、豊かなブナの森と共生した文化。クマを追って山と谷を駆け巡った日々の記憶、忘れ去られたマタギの伝承、ダム建設で湖底に沈んだ山村。世界自然遺産登録以降、山人の生活とのかかわりを絶たれた山々…、今は失われてしまった山の民の暮らしと、白神山地の自然を記録したルポルタージュ。
目次
第1章 水没集落
第2章 白神山地とマタギ
第3章 クマ狩り
第4章 山々に残る伝承
第5章 山の暮らし
第6章 白神山地をめぐる歴史
終章 ひとつの山村の消滅と将来について
著者等紹介
根深誠[ネブカマコト]
1947年、青森県弘前市に生まれる。明治大学山学部OB。日本山岳会会員。日本勤労者山岳連盟顧問。1973年以来、ヒマラヤに通い続ける。84年、アラスカ・マッキンリー山(デナリ)で行方不明になった先輩仲間の植村直己さんの捜索に参加。これまでにヒマラヤの未踏峰6座に初登頂。故郷津軽の自然を愛し、白神山地を歩き尽くす。ブナ原生林を東西に分断する青秋林道の建設計画が持ち上がった際には、反対運動を立ち上げる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ちぃ
26
白神山域、最後の伝承マタギ鈴木忠勝の生涯を綴った本。ある時は開発、またある時は自然保護の名の下に住まいや暮らしを変容させていった人々。山賊と呼ばれるほど急峻な山の中にその拠を置いていた北アルプスに比べると、里山らしい山林を生活の延長として活用していたことが伺えるが、禁忌とされる行為などはびっくりするほど共通している。白神山地を保護することは必要だったかもしれないけれど、ここにある伝承マタギの人々が自然を傷つけていたとは思えず…著者が締め括るように、その共生の仕方を学ぶような場となっても良かったのではないか2021/02/02
ゆぎ🖼️
23
マタギさんの語り口がオトマトベありで軽妙かつひょうきんである。熊は捨てるところなく、薬や食料にしていたこと。マタギの伝説では槍一本で不意をついていたのが始まりのようだ。仕留められなかったときは死んだフリをして転がされて顔の皮を剥がされても生き延びて必ず仕留めた伝説とか。小熊は残らず仕留めないと祟られるとか。密猟者やハンターよりも山に生きる掟を訥々語る。ときどき怖い話もあり。2020/10/23
りー
15
単純に「ゴールデン カムイ」マタギの谷垣ニシパがカッコいいから、という理由で読み始めました。白神山地最後のマタギ鈴木忠勝さんの口伝を受けた登山家の著者が書いた本です。山の生活についての描写は深い森の気配(知らないのに)を感じ、引き込まれます。そこだけ読んでいてもクワクしますが、著者が本当に投げかけたかったのは、世界自然遺産に登録された後、魚釣りや山菜採りなどが禁止され、人間と森が相互に築いてきた関係が歪んでしまったことへの疑問でした。2020/04/25
ichi
12
【図書館本】ホンモノのマタギを知ることができた。今でいう白神山地(当時はそんな地名はなかった。)の正真正銘の最後のマタギのノンフィクション。とても読み応えあり。2018/06/17
sansirou
8
白神山地最後の伝承マタギ鈴木忠勝との交流とまたぎの実態、白神山地の置かれている現状、さまざまな思いが本から伝わる。自然と人との共生がまた一つ失われつつあるのを、止めることはできないのか。2024/11/18