内容説明
伝説のフライフィッシャーが詩情ゆたかに語る山女魚釣りの川。心に残したい里川の記録集。全15河川収録。
目次
人工鮭とは無縁な川 尻別川(北海道)
農耕社会の岩魚釣り 志戸前川(岩手県)
木製電柱の山女魚里 薬師川(岩手県)
混合林、雑木林、そして雑からの文化 鼠ヶ関川(山形県)
山女魚には木造民家がよく似合う 黒谷川(福島県)
川の荒廃と山女魚釣り 鱒沢川(福島県)
大盆地風景の桃源郷 芦川(山梨県)
今も変らぬ思い出の富士川左岸 雨河内川(山梨県)
人工都市と自然との共生 小矢部川(富山県)
山之村の風と山女魚と 跡津川(岐阜県)
人の匂いのしみついた、里の大川 高原川(岐阜県)
普通の山村、普通の川、普通の山女魚 小八賀川(岐阜県)
御犠という名の魚 高尻川(島根県)
石の里は山女魚の王国 鹿川(宮崎県)
非漁、非競の山女魚釣り 緑川(熊本県)
著者等紹介
芦澤一洋[アシザワカズヒロ]
1938年山梨県鰍沢町(現・富士川町)生まれ。早稲田大学卒業。アウトドアライター。アートディレクター。新聞、雑誌、テレビ、ラジオなどでフライフィッシング、バックパッキングを中心にアウトドアライフ全般にわたる活動を展開。この分野の草分け的存在で、第一人者となった。1996年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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roatsu
18
山女魚や岩魚を釣り歩きながら、各地の川や森を行く描写はまるで著者と一緒に竿を出しているような臨場感がある。また、芦澤さんは自然とその中の人間や自身の在り様についてこんな考えや思いを巡らせていたのだな、とその深さと複雑さも垣間見る。それらに賛否はあるだろうけれど、自然を本当に愛して人間として可能な限り謙虚かつ誠実に向き合おうとしたのだな、と芦澤さんの在りし日を追想できるエッセイ。時代は流れて今日でも渓流釣りやアウトドアレジャーは隆盛だけれど、芦澤さんは現状を見てどう考えるだろうか、と思いつつ。2018/05/14
志村真幸
0
1989年に出た単行本の文庫化。 15篇のエッセイが収録されている。北海道の尻別川で人工孵化とは無縁のサケに挑戦したり、福島の鱒沢川で川の荒廃を憂いたり、島根の高尻川でゴギを釣ったりといった具合だ。 どちらかというと社会批判的な色合いが強く、単純に釣りエッセイを読みたいひとには向かないかも。 ともかく、自然と人間に真摯に向き合ったひとだったと思う。 2018/02/05