内容説明
1978年8月6日。ラインホルト・メスナーは15キロのザックを背に、たったひとりでベースキャンプをあとにした。目標はナンガ・パルバート、ディアミール壁。標高差約4000メートルの岩と氷の壁に挑んだ彼は、地震によるルート崩壊で退路を断たれ、幻覚に悩まされながらも登頂を果たし、帰還する。死と隣り合わせの5日間を生き抜き、人類初の8000メートル峰完全単独行に成功した彼が、登攀のすべてと自己の内面を鋭く描いた代表作。
目次
ナンガ(一人の男と一つの山;黒い孤独;単独登攀)
ティケ(夢は生きる;独り歩き;長い影の夜 ほか)
ディアミール(白い孤独;人の声;氷に守られて ほか)
ナンガ・パルバートの25年(ナンガ・パルバート年表;遠征隊一覧;登頂者一覧 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hi
3
超人中の超人、変人中の変人ラインホルト・メスナーと自分に共通点があるなんて思わなかったからちょっとびっくりした。一人で登るのが純粋に好きなのね、この人。自分が、体力的技術的には登れる力があるのは確信しているけど、自分の感情が激しすぎてそれに振り回されて苦しんでる。どう行動したかより、どう考えたか、に力点を置いて書かれている(サードマンがほぼずっと一緒にいるし…)。著作は多いけど分かりにくいから、あまり名作扱いされてないもんね。多少は分かりやすくないと、賞賛するのも凡人には難しい。「とくにこれといった→2017/04/08
S
1
前半のベースキャンプまでのところはだらだらとした現状の説明みたいのと、離婚して孤独とか、あまり面白くない。後半のアタックの部分はさすがにドキドキして楽しかった。意味ある登山とは、極地法とアルパイン・スタイル登山の見解、なぜ山に登るか。超人メスナーの考え方をしるのは興味深い。「ぼくは恐れることを通じて、この世界を知りたいのだ。」「孤独はもはや恐れではなく力なのだ」2012/09/24
ころにゃん
1
弟を亡くしたナンガ・パルバートに再度登るラインホルト・メスナー。弟を失い、友人を失い、巨大化する遠征隊を退け、少人数や単独行を貫き、自己とむきあう。弟の死を自分の生命の一部と考えるまでに、幾年も費やし、その悲劇を背負って生きていかなければならないと覚悟して生きる姿は孤独だ。後悔と自責と山へ情熱、論理的な行動と、憑りつかれたような行動がふてぶてしくも、切なくも感じる。孤独を自分のものにして生きるのは、厳しくも摩擦の多い人生を歩むことにつながる。極限状態での心理状況を告白し、自分をさらけ出すような精神の記録2012/05/08
Teppei Sakano
0
怯えて不安にかられている自己も、それでも乗り越えていこうとする自己もどちらも受け入れて決断していく。自分自身を俯瞰して見つめ肉体を精神でコントロールするのはヨガの修行者のようでもあり、登山家って求道者のようだなという思いを新たにした。2023/03/26