出版社内容情報
近代において、対外戦争を任務とするはずの陸軍は、しばしば植民地や占領地での反乱鎮圧にも関与した。しかし民衆を相手とする軍事行動には、将兵による暴力という課題がつきまとった。
実は、本書が分析の対象とする近代オスマン帝国は、植民地をもたなかったにもかかわらず、同様の課題に直面していた。もっとも、国内に住む多宗教・多民族の集団のうち、とくにキリスト教徒による蜂起や武装闘争に悩まされたオスマン帝国にとって、反乱鎮圧やそれにともなう暴力の対象はもっぱら自国民であった。これだけでも困難だが、オスマン陸軍はヨーロッパ列強や近隣諸国の軍事的脅威、さらには財政難や皇帝専制のもたらす不合理にも悩まされた。
それでは、そのような陸軍はいかなる組織になるのであろうか。そこに勤務する軍人たちは、陸軍や民衆に対していかなる考えを持つにいたるのだろうか。
本書は、反乱鎮圧に際するオスマン陸軍将兵のブルガリア人民衆への暴力という不祥事を手がかりに、オスマン陸軍の組織文化を明らかにする。
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〈目次〉
序論
1 本書の目的・研究対象・意義
2 分析の視角
3 近代オスマン帝国軍事史・非軍事史研究の課題
4 史料
5 本書の構成
第1章 青年将校と現場
1 マケドニア・トラキア対反乱作戦
2 成功した戦闘――ニコディム
3 オスマン陸軍の教育
4 失敗した戦闘――上チャユルル
第2章 万機親裁の陸軍
1 陸軍の編制
2 統帥・人事
3 兵力・財政
第3章 処罰の恣意性
1 猟兵大隊の創設
2 猟兵大隊の暴力事件
3 猟兵大隊の処罰
第4章 不信感と抑圧
1 ブルガリア人民衆への不信感
2 東方鉄道の警備問題
3 ブルガリア人民衆への抑圧
結論
あとがき
索引
参考文献
註
【目次】



