目次
序章 ナチ体制と「ふつうの人びと」
第1章 史料としての野戦郵便
第2章 「ふつうのナチ」HKの場合
第3章 戦友意識・男らしさ
第4章 暴力・被害者意識・「主体性」
第5章 他者・自己イメージ
終章 イデオロギーと「主体性」
著者等紹介
小野寺拓也[オノデラタクヤ]
1975年生まれ。2010年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了、博士(文学)。現在、お茶の水女子大学文教育学部、昭和女子大学人間文化学部非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Pyonkichi
2
野戦郵便を史料として大戦末期におけるドイツ兵がなぜ「主体的」に戦争を継続しえたのかを探った研究書。個々の兵士にとってはナチ・イデオロギーそのものは大して重要な位置を占めておらず、むしろ伝統的な民族意識やナショナリズムの範疇に収まるような観念が、機能としてはナチズムと同等の暴力性をもたらしたとする。また、兵士たちが選択できる行動の余地はほとんどなかったがゆえに、残されたわずかな選択肢が過剰に意味づけされ、主体的な暴力性を引き出すことが可能になったとする結論は興味深い。2022/05/03
晴天
1
過酷な戦場体験も、故郷を含めた自分たちの先行きへの不安も、そもそも軍隊での暮らし自体も、何もかも自分が望んだわけではなく、理不尽に到来する苦難に対して兵士はそれらをどう解釈して自分はどうあらねばならないと考えたのか。郷里への手紙という心を整理しあるべき自分を描こうとするプロセスから、兵士たちの胸のうちを推し量る。犠牲の意味づけ、「犠牲を払わぬ者」への怒り、占領地の他者への蔑視、自分たちの優越など二項対立が目立つが首尾一貫せずに重層を為し、それが平凡な人間の非常時における防衛機制として生々しく感じた。2019/09/18
鍵窪錠太郎
1
大学図書館本、論文の書籍化は往々にして高くなるのが常なのが残念である。内容としては題名の通りなのだが、取り上げた野戦郵便の書き手は高学歴層が多いので本当に「ふつう」なのかが気になる所。しかし第二次世界大戦末期の彼らも、現代日本人の価値観から見ても分かるような普通の人々で読んでいて面白かった。ミリタリー趣味上でも役立ちそうな知見が得られたので個人的には読んで良かった一冊。もう少し安ければ手元に置いておくんだがなァ…2017/10/27