内容説明
ノルマン征服はあったか?イングランド人の王とノルマン人の公の戦闘絵巻から新貴族の台頭や海民の暮しなど11世紀、北西ヨーロッパの海峡世界を読み解く。
目次
第1部 絵解き(ハロルド ノルマンディに行く;ブルターニュ戦役;ハロルドの宣誓と臣従 ほか)
第2部 「綴織」の制作とその歴史(「綴織」の構成と制作の過程;「綴織」の歴史)
第3部 歴史的背景(イングランド人の国王とノルマン人の公;新貴族;紛争解決と新体制 ほか)
著者等紹介
鶴島博和[ツルシマヒロカズ]
1952年、北海道室蘭市生まれ。1977年、ロンドン大学政治経済学院(London School of Economis)留学。1983年、東北大学大学院文学研究科博士課程後期単位取得退学。現在、熊本大学教育学部教授。FSA(ロンドン尚古協会フェロー)、FRHistS(王立歴史学協会フェロー)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Christena
9
バイユーのタペストリーを、『ノルマン人の公ウィリアムの事績録』などの史料から紐解いていく。オールカラーで写真も大きく、タペストリーの細部まで見ることができる。ただ絵を見るだけでは気が付かない細部の意味や、歴史的地理的背景など、1場ごとに切り取って丁寧に解説している第1章の絵解きが面白かった。それにしても、たった10色の毛糸でこんなにも素晴らしい作品が作られているなんて。いつか実物を見に行きたい。2015/11/28
人生ゴルディアス
5
ノルマンディー公ウィリアムがイングランド王になる時の戦いと、その経緯を記した刺繍絵巻の一場面ずつの解説。当時軍勢の大きな移動には船が主流であり、漁民を利用することから、敵領の漁民たちの漁の時期と賦役の条件から、漁民たちが地元にいない時を見計らって攻め込む……とかよかった。1060年のことなので、残存する資料は後世に書かれたものが多く、いくつかを並行して参照しながら、おおむねこんな具合だろう、と推定していく。綴れ織りは現物がフランスの博物館にあるらしいので、ちょっと見てみたいかな。2023/06/14
Wataru Hoshii
3
この有名な綴織を見るためにバイユーに行ったのは、今から20年ぐらい前のことだ。およそ1000年前に作られた長大な物語絵巻の存在感に圧倒され、いまだに魅了され続けている。そんな私が待ち望んでいた素晴らしい研究書。絵巻すべてをカラー図版で掲載、史料と対比しつつ各場面の詳細な解説がなされている。第三章の「歴史的背景」は非常に難しいが、この綴織を当時のドーヴァー海峡地域の政治・社会的コンテクストの中で読み込むことの重要性がよくわかった。ニシン漁を行っていた海民の存在など目から鱗。いつかまたバイユーに行けるかな。2016/05/09
ヒラタ
1
タペストリの写真を見やすく載せてくれて、どのシーンなのか、誰なのかを具体的に書いてくれている、イギリスとフランスの地図もあり位置関係がよくわかりました。人名・地名・事項に別れた索引も見てるだけでもバイユータピストリの世界に引き込まれるようで目に嬉しいです。トゥラルド・ワダード・ヴィタールにもなんだか親近感を持ちました。2019/04/18
橘
0
地味な色合いながら、繊細で躍動的な糸の走り。この類稀な刺繍絵を読み解く本書は、歴史書としても評価に値するだろう。2015/09/22