内容説明
本書は1998年8月、「北海道高等学校日本史教育研究会第22回研究大会」として、函館市で開催されたシンポジウムの記録である。従来の北方史研究ではほとんど取り上げられることのなかった、中世~近世における蝦夷地仏教布教の問題や、戦国時代一向宗教団の北奥羽・蝦夷ケ島布教と「北の海の有徳人」の歴史などが、初めて本格的に論じられている。
目次
第1部 「北の内海世界」の発見(北緯40度以北の10~12世紀;糠部・閉伊・夷が島の海民集団と諸大名;北海道の戦国時代と中世アイヌ民族の社会と文化)
第2部 「北の内海世界」における国家・民族と文化接触・文化変容(防御性集落の時代をどうみるか―南からの力・北からの力 古代文献史学の側からの試論;蝦夷・北奥と本願寺教団;「みちのく」像の光と影―その宗教史的アプローチ;北の「倭寇的状況」とその拡大;討論のまとめ)
付論 授業化への一試み―「参加記」にかえて
感想・レビュー
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きさらぎ
5
東北北部からサハリン、更に大陸のツングース系民族まで。東北に「防御性集落」が発生する理由を中央による地方統治が弱まった事による地方経済の活性化と域内抗争に見て、古代から中世の経済(下部)構造の変化の視点から論じる「防御性集落の時代をどう見るか」、蓮如率いる本願寺教団のネットワークに注目し、教団の東北・蝦夷への布教活動を概観する「蝦夷・北奥と本願寺教団」、日本海側の十三湊に注目が集まる中、津軽海峡の太平洋沿岸の氏族に注目する「糠部・閉伊・夷が島の海民集団と諸大名」など。この世界をもっと知りたいと思った。2017/02/24
ckagami
2
小口雅史「防御性集落の時代をどうみるか」のみ読了。日本版中華思想(中国に対抗するものとしてのミニ中華、異民族を従えている国家)に利用された蝦夷。そこからの、王朝国家「中央政府が地方政治に気を遣わなくなる」→辺境軍事貴族の露骨な収奪→北方世界の緊張=防御性集落2015/01/08