出版社内容情報
院政の全盛期を築いた鳥羽院の皇女八条院と、彼女を賢才としたう廷臣たちの物語。保元・平治の乱を始まりとする動乱の時代に、八条院がいかに中立を保ちながら生き抜いたかを、『玉葉』『明月記』などの史料から描く。
内容説明
史上最強の皇女―動乱の時代、「動かざる巨人」「賢才」と評された八条院。後白河上皇も武家も、不用意に手出しができなかった。彼女は、いかにして中立を保ち、父母から引き継いだ臣下と領地を守ったのか。『玉葉』『明月記』『愚管抄』などの史料からよみがえる、八条院とその母、そして廷臣たちの物語。
目次
第1章 鳥羽院政の後継者
第2章 保元・平治の乱
第3章 八条院院号宣下から以仁王事件まで
第4章 新たな時代の始まり
第5章 しずかなる晩年
第6章 八条院を取り巻く群臣たち
著者等紹介
永井晋[ナガイススム]
1959年生まれ。國學院大學大学院博士課程後期中退(文学修士)。國學院大學博士(歴史学)。専攻、日本中世史。神奈川県立金沢文庫主任学芸員を経て、関東学院大学客員教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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餅屋
6
八条院領と言えば「所領220ケ所以上を持ち大覚寺統に継承され~」と、生き残り膨張したのは何故なのか?鳥羽院→美福門院→二条天皇親政派から継承し、八条院を本所と仰ぐ共同体。本所および院宮分国という潤沢な経営基盤を持ち、推挙権御給すなわち叙位の人事権を行使した。八条院領荘園が膨張した理由は後白河を信用できないと考えるものが多かったから。清華家や公卿を維持したい勢力と互恵関係となり優位な人材を確保して領家を守り切ったから。後白河vs○○という単純な構図ではなく、第3極として立場から歴史を見直したい(2021年)2022/03/09
NyanNyanShinji
4
鳥羽天皇と皇后得子との間に生まれ、両親の愛に包まれて育った八条院。彼女がその両親から引き継いだ荘園領により、当時の最大の荘園領主となり以仁王やその子達を始めとした人々を養子・猶子としてファミリーを形成する。部下達の所領を守るためには、後白河院や寺院との対立も辞さないビッグママ。 本書はそのその母藤原得子(後の美福門院)の周辺から始まり、鳥羽天皇、後白河天皇、二条天皇親政時代、平家の時代、治承寿永の戦、後鳥羽天皇と長きに渡って生き抜いた彼女の人生と彼女を支えた人々を描く。ちょっと人が多すぎたけどまた読みたい2021/10/20
眉毛ごもら
4
鳥羽上皇の鍾愛の皇女で広大な八条院領を所有していた八条院暲子内親王の生涯を周りの廷臣、女房達の記録から読み取る。院政期から南北朝時代にかけて避けて通ることのできない八条院領という広大な領地の主である八条院について新刊が出ていたので購入。読みやすくわかりやすい。鳥羽上皇の遺志と遺産を継いだことや所領だけでなく昇級の権利も持っていた為に後白河法皇と対立した独立派閥として存在した。所領争いの時には毅然とした態度を取るなどの態度などから廷臣から頼られ所領と権威の拡大に繋がると。皇女として最強の帯の文句は疑い無い。2021/08/05
Jampoo
3
広大な荘園の本家として八条院領を形成した八条院暲子内親王と彼女を取り巻く人々についての本。 知識が無いので知らない人物の話が多い中、頑張って読んだが、中世の京の世界を色々な角度で知れて良かった。 人事権と所領を持ち、後白河法皇を警戒する人々や以仁王の子供達を守りながらも、八条院本人は平家や後白河と大きな対立はせず、中立地帯であり続けたのは女性ゆえなのだろうか。 中世の「内親王」という立場が通常どんな権力を持つ物なのか知りたいので、次はそういう本も読みたい。2025/04/07
cineantlers
3
保元・平治の乱を経て後白河院政派と高倉天皇親政派が対立を深める時代に独自の権門として存在感を放った八条院の世界。その不可侵な政治勢力は土地の相論に巻き込まれても彼女は理路整然と自分の周囲の人間の権益を保障する行動が認められた結果だった。八条院には家族は居なかったが三条局を母とし、養子で迎えた以仁王の三人の遺児、九条兼実の子を自身の後継者として大切に育てていた。その為に努力を惜しまないわけだが鳥羽が最後に寵愛した美福門院の子として産まれ、本朝で華やげるものとして生きてきた彼女そのものの生き方の様に感じられた2022/09/07