内容説明
大正デモクラシーを先導し、議会・政党政治危機の時代には軍部に敢然と異を唱え、議会・政党政治の擁護と対外膨張阻止に全力をそそいだ美濃部と吉野。彼らの提言に従っていたら、戦争は起こらなかったはずである。なぜ、彼らの主張が危機の時代、その真価を問われるときに影響力をおよぼせなかったのか。それを問うことは、民主主義時代の私たちが、よりよき選択を行うために不可欠である。その答えを、当時の政治社会と彼らの言動から模索していきたい。
目次
美濃部と吉野を考察する意味
1 大正デモクラシーと美濃部、吉野
2 帝大教授としての美濃部と吉野
3 美濃部の天皇機関説
4 吉野作造の民本主義
5 大正デモクラシーの展開と挫折
今日への遺産
著者等紹介
古川江里子[フルカワエリコ]
1968年生まれ。青山学院大学博士後期課程標準年限修了。博士(歴史学)。専攻は日本近代政治思想史・社会運動史。現職、青山学院大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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新田新一
12
美濃部達吉と吉野作造の業績を紹介しつつ、大正デモクラシーの本質と限界を記述した一冊。大正デモクラシーは、次の時代の軍国主義と鋭く対立するものだった、と書かれています。普通選挙の重要性も主張され、大正デモクラシーは先鋭的なものだったことが分かり、心強く感じました。エリートによる一般市民を統治を目指す点が、大正デモクラシーの限界です。でも、多くの人が政治に幻滅している現在に比べ、民主主義の本質についての議論が盛んだったこの時代は、はるかに健全という気がします。ここから学べることは多いと感じました。2024/01/02
しごろ
0
大正デモクラシーを先導し、議会・政党政治危機の時代には軍部に敢然と異を唱え、議会・政党政治の擁護と対外膨張阻止に全力をそそいだ美濃部と吉野。彼らの提言に従っていたら、戦争は起こらなかったはずである。なぜ、彼らの主張が危機の時代、その真価を問われるときに影響力をおよぼせなかったのか。それを問うことは、民主主義時代の私たちが、よりよき選択を行うために不可欠である。その答えを、当時の政治社会と彼らの言動から模索していきたい。2017/12/17
rbyawa
0
h055、正直なところ吉野作造のほうが重要度が高いと認識していたのでなぜこの二人でこの並び順? かと思ったものの、あ、そもそも先輩と後輩の関係なんですね、知らなかった。いわゆる美濃部の天皇機関説に関しては「どちらかというと古来からの統治に近い」という説明をされていたのに納得、ただ、それが通じたのは政治に関わっていた層や一部インテリくらいだったろうと言われるのも同感。ただ、国民主体を唱えなかったというのは別の本で「それによって危険思想のレッテルを免れた」ということで評価は一部保留、この時代の理解は難しいね。2017/07/31
えむ
0
時代背景との関連を重視しつつ、美濃部と吉野の人生を概観。表面的な出来事の事実関係のみならず、彼らの思想や主張を取り上げていたのが印象に残った。2017/03/06
ダージリン
0
二人の思想が当時の社会に生きなかったことが惜しまれる。政党政治が機能せず、足の引っ張り合いに明け暮れていたことは、日本にとって大きな痛手だった。現代の視点から見ると、彼等の立脚点は完全なる民主主義ではなかったかも知れないが、評価されるべき人達と思う。2014/06/28