出版社内容情報
明治・大正・昭和の三時代を生き抜いた政治家西園寺公望。なぜ西園寺が「最後の元老」となったのかを解き明かし、なぜ明治憲法下の日本で、政党政治が定着できたのかを考える。
永井 和[ナガイカズ]
著・文・その他
内容説明
太平洋戦争開戦の一年前に九一歳で亡くなった西園寺公望は、明治・大正・昭和の三代の天皇に仕え、日本近代の大変動を生き抜いた政治家であった。本書は、彼の長い長い生涯を概観することはしない。もっぱら、なぜ西園寺が「最後の元老」となったのかという問題に集中する。時間的にいえば、大正中期から昭和初期の一〇年ほどの時期が取り扱われるにすぎない。しかし、この問題を解き明かさなければ、議会政治の出現を想定していない明治憲法のもとで、いかにして政党政治が定着できたのかという問に答えることはできないのである。
目次
最後の元老
1 元老の役割
2 御下問範囲拡張問題
3 元老は園公で打止め
4 西園寺「最後の元老」となる
5 元老と政党政治
著者等紹介
永井和[ナガイカズ]
1951年生まれ。京都大学大学院文学研究科中退。専攻、日本近現代史。京都橘大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バルジ
5
一般的な人物評伝ではなく、非公式な制度としての「元老」と首相奏薦方式の変遷を大正末から短い期間に絞って論じている。清浦奎吾・山本権兵衛を準元老として位置づけようとする牧野伸顕に対し西園寺は悉く拒否した。「一人元老制」と「元老・内大臣協議方式」は同じ原理に立つもので相互に補完し合う制度だったという指摘は面白い。一点疑問だったのは西園寺が信頼「していた」という牧野に対し、何故首相奏薦方式の相談を行わず事後報告に留めたのかという点。下手すると対立の火種になりかねない事態だがそれだけ相互の信頼があったのだろうか。2019/07/14
samandabadra
2
このシリーズとしては異色の一冊。1849~1940年までの人生の内、描かれるのは1920年代から1940年まで。元老を拝命し(1912年)、1924年、もう一人の元老・松方正義がなくなって、唯一の元老となり、唯一の首相メーカーとして君臨した時代の話だけなのだから。ただ、その使命のプロセスとして元老・内大臣が相談のうえ決めるシステムにし、政党内閣制には賛成ではあったが、首相であった人に後任を決めさせず、あくまで天皇の役割の有名無実化せぬようとどめようという役割を演じたことを強調した評伝ともいえる。2022/03/18