内容説明
「日本近代法の父」とは、決して過分の評価ではない。ボワソナードは、明治日本の近代法制導入に、また外交交渉や条約改正にまで、八面六臂の活躍をした。しかしその素顔は、仕事に熱中するタイプの、おそらくは世渡り下手な、打算のない、赤誠の人であった。彼を旧民法典などの諸法の起草者として迎えられたのは、やはり明治日本にとって大変幸いなことであったといえる。そして彼の足跡を追うと、明治の偉人たちの数奇な運命も浮かび上がる。
目次
「日本近代法の父」の「殉教」
1 「地の果て」への赴任
2 多彩な活躍の開始
3 最盛期―民法編纂と条約改正
4 旧民法典の完成と暗転
5 「至誠の人」の殉教とその遺産
エピローグ―南仏アンチーブの墓地
著者等紹介
池田眞朗[イケダマサオ]
1949年生まれ。慶應義塾大学大学院法学研究科博士課程修了。博士(法学)。専攻、民法・金融法・民法学史。現在、武蔵野大学大学院法学研究科長・教授、慶應義塾大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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フクロウ
3
ボワソナードが旧民法典起草だけでなく、大久保利通の外交顧問をやったり、旧刑法・治罪法の起草をやっていたことを知れた。また、旧民法典のフランス色は新民法のドイツ色で一掃されたという認識だったのだが、近時は半々くらいの影響だという理解となっていることがわかった。また平成30年改正民法で導入された配偶者居住権の制度も、かつてボワソナードが導入を目指し、また私生児だったボワソナードのフランスでの研究テーマの本領が『夫婦間の贈与の歴史』『生存配偶者の諸権利の歴史』なのには驚いた。2025/02/17
Praesumptio cedit veritati
2
ごく簡潔なボアソナードの評伝(?)。明治初期に来日して法整備に尽力したボアソナードについて説明する。もっとも、ボアソナードの来歴に関する叙述は乏しく、来日の経緯から来日後の事績に関する叙述が大半である。また、ボアソナード自身のことよりは、明治初期の法整備の様子をボアソナードを中心にして素描したという方が正確かもしれない。法学教育機関の明法寮設置、拷問廃止の建議、刑法・治罪法の起草、民法編纂、条約改正、ボアソナード旧民法とその後の法典論争が素描され、特に現代の民法への影響が簡潔に説明されている。2022/11/01
zhiyang
1
映画化できそう(小並感) 「日本史リブレット 人」シリーズの棚を眺めてみたら面陳されていて目にとまり読む。法整備という国家の根幹にかかわったにも関わらず、(外国人だからか)あまり注目したことのなかった人に焦点が当たっているのが新鮮。ポイントは多いが、一番は彼そのものより、法典論争における「拒絶をしながらも実はほぼそのまま受け容れる」という、外来文化の摂取の態度ではないか。たとえば、現行憲法を歴史の中でどう位置付けるかを考えるうえでも、ボワソナードの仕事や彼への評価というのは結構大事になるのかもしれない。2022/05/06
ふら〜
0
法制史とか蔑ろにしていたので、人の側面から学び直し。このリブレットシリーズ簡潔で読みやすいよね2022/05/22
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