内容説明
東国を背負った二人のリーダー、時政と政子。「鎌倉」の時代を創るために父と娘は中世という時代にどのように向き合ったのか?伊豆・京都・鎌倉、それぞれの地域で彼らは新しい時代とどのようにかかわったのか?東国の自己主張を時政と政子の生き様から汲み上げる。頼朝が、義経が、そして後白河院・後鳥羽院が、それぞれの場で顔をのぞかせる。緊張の公武関係を新しい視点からひもとく。
目次
選択の時代
1 飛躍と約諾の地、伊豆(伊豆国と北条の地;「豪傑」北条時政;選ばれた時政一族―「北条殿」以前 ほか)
2 折衝と交渉の地、京都(それぞれの都;時政、上洛す;京都守護・時政―「武家ノ事ヲ執行ス」 ほか)
3 惜別と訣別の地、鎌倉(関東の選択;舅時政のあせり;時政、遠江守となる ほか)
著者等紹介
関幸彦[セキユキヒコ]
1952年生まれ。学習院大学大学院人文科学研究科博士課程修了。専攻、日本中世史。現在、日本大学文理学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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keint
5
奥富敬之「鎌倉北条市に関する基礎研究」第一章と違う見解を取っているため、再読予定。 (この本が北条氏がある程度の勢力を持った豪族として議論しているため)2019/02/19
samandabadra
4
古本屋で偶然手に取る。「鎌倉殿の13人」を裏側から見たような読後感。とまれ北条義時はほぼ出てこない。作者は「北条政子」に関する著作を持つ方で、父親の時政よりも政子の視点から見ているように見える向きがある。実際、政子の選択で長く鎌倉幕府が生きながらえたという事実はあるのだが、時政の選択肢だと政局は混乱したといえるには与えられた情報が少ないので判断できず。なお、「13人」から比企氏や畠山氏などが排除される過程が別の視点から描かれている。頼朝の浮気とそれに対する政子の嫉妬の事件を含めとても興味深い内容2024/05/25
keint
4
時政以前の北条氏をある程度の勢力をもち、京とのネットワークがあったことを前提とした論考。 時政の子息には源氏、京の貴族、在地武士団の3つのネットワークがあり、2番目を利用して東国政権を構築しようとした時政と1番目を重視して京ともうひとつの東国政権を作ろうとした政子・義時という対立軸があったことが牧氏事件につながったというのは納得がいった。2019/08/07
うしうし
3
「日本史リブレット人」はページ数が80頁強であるため、コンパクトで読みやすい。本書もほぼ半日で読了。このシリーズには北条義時は収録されておらず、大河ドラマで脚光が当たるまで、この時期は時政・政子が、義時より重要視されていたことがわかる。 牧氏事件の背景に時政の関与を積極的に考えるのが、本書の特徴。「東国主義」、すなわち「東国出身の将軍をつくりだし」、「北条氏からの将軍輩出も可能となる」政権構想を時政がもっていたとする(p81)。通説と異なる著者の独自解釈。2022/06/18
読書記録(2018/10~)
2
日本史リブレットシリーズ、コンパクトでいいなあ。本文部分86頁。北条氏“弱小領主論”を否定、頼朝に選ばれた立場とする。時政の婚姻ネットワークを検討し、政子・義時と次第にずれが生じる過程を見る。鎌倉幕府の方向性の対立として、牧氏事件も時政の積極的関与を想定した。2021/10/06