内容説明
長く日本史上の悪役として評価され続けた平清盛。『平家物語』をはじめとする軍記物語や源氏の武家政権の発展を描く歴史書では、清盛に否定的な評価がくだされるのが常でした。本書は、多様な史料を用いて清盛の生涯を追いながら、虚像と実像を可能な限り見極めることで、日本の政治を武士が主導する新たな時代の幕を開けた清盛の姿を描こうと思います。
目次
平清盛のイメージをめぐって
1 武家棟梁としての活躍(栄達を約束された出自;祇園社闘乱事件;武家棟梁家の継承 ほか)
2 王権への奉仕者の栄光と苦悩(後白河と二条に奉仕する清盛;摂関家と清盛;清盛と平氏の栄華 ほか)
3 独裁政権への道(孤立する清盛;後白河との決別;以仁王の挙兵 ほか)
ふたたび平清盛のイメージをめぐって
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カラス
1
割と面白かった。清盛に関する知識はほとんどなく、火の鳥乱世編のハゲのビジュアルイメージくらいしかなかったけれど、この本のおかげで清盛に対する認識が少しだけ深まったと思う。清盛が、板ばさみとなったおかけで中間管理職めいた苦労をしていたというのは意外、もっと独裁者的なイメージがあったので。また、鹿ヶ谷の陰謀に対して、清盛のでっち上げとする著者の解釈も非常に印象に残った。もっとも、この解釈にはあまり賛成できない。なぜなら、もしそうなら、いくら何でも粗雑すぎるからだ。2020/10/05
hr
1
読了。歴史における平清盛は、天皇家を蔑ろにする「朝敵」のイメージや、延暦寺や南都に対する態度などから「仏敵」のイメージを付与されてきた。それは、平氏の政権後に成立した征夷大将軍を頂点とする幕府体制が長期間続いてきたからで、幕府体制を是とするための存在として平清盛はすこぶる使いやすかった。幕府の存在意義の説明のために、必要以上に貶められた扱いを受けた清盛だった。それでも最近の大河ドラマで清盛を演じた渡哲也や松山ケンイチは、新しい清盛像を見せてくれている。それは本書のような研究がもたらしたものなのだろう。2018/06/04
うしうし
1
著者の他の著作を図書館で検索していたら、この本もヒットしたため県図書本を借り読み。このシリーズは活字が大きいことや装丁の関係から本の重量が軽く、ページ数も90頁前後であるため大変読みやすい。内容は近年の清盛研究を最大公約数的にまとめた無難な概説。2011年の出版で、悪くいえば2012年大河ドラマの便乗本のひとつであろうが、近年の研究の到達点が平易な言葉で記述されている。気になったところを以下列挙する。2015/06/14