出版社内容情報
日本の思想戦の主体とされた大日本言論報国会と会長で論壇の大御所となった徳富蘇峰の姿とともに、思想戦論の行き着く先を描く。
赤澤史朗[アカザワシロウ]
立命館大学名誉教授
内容説明
第二次世界大戦は、イデオロギーの闘いでもあった。アメリカにとって、それは民主主義に敵対するファシズムの哲学を打倒する闘いであり、ファシズム諸国の国家改造が目標だった。これに対して日本の「思想戦」は、対外的な宣伝力が弱く、「思想戦」の主体とされた大日本言論報国会は、国内に残されている米英思想の排撃に狂奔する。同会々長の徳富蘇峰は、十五年戦争期に戦争を煽ることで不死鳥のように甦り、ついには論壇の大御所となった。「思想戦」論の行き着く先を、戦時下の蘇峰の姿とともに描きたい。
目次
知識人の戦争責任
1 十五年戦争期の徳富蘇峰
2 思想戦と大日本言論報国会の結成
3 国内思想戦のイデオローグたち
4 運動の展開
5 「言論暢達」政策と「大号令」詔書
蘇峰の戦後と言論報国会の位置
著者等紹介
赤澤史朗[アカザワシロウ]
1948年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科史学専攻博士課程中退。専攻、近現代日本思想史。現在、立命館大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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バルジ
3
徳富蘇峰への言及は全体の1割弱でほぼ戦時下の大日本言論報国会の展開が論じられる。その組織名が表す通り、太平洋戦争開戦から数年までは政府と軌を一にし、言論界の統制とその「日本主義」的論調で国民統制を強めていた。しかし会長徳富蘇峰と親しい東條英機が退陣すると報国会の論調にも変化の兆しが見え、末期には憲兵に監視されるような性質の団体となる。いわば「言論報国」の二面性が垣間見える展開だが、この報国会を彩る論者も近代主義者が混じっていたりと、日本主義的な側面だけで語れないのが興味深い。2022/06/24