内容説明
軍用地は、最初主要都市の中心部に誕生し、やがて都市近郊に広がって一大軍施設を築き上げ、一方で、軍馬育成用の牧場として、また砲兵を中心とした演習場として、山野にも進出しました。その先は、植民地への拡大でした。このような軍用地拡大の過程を、都市の発展との関連や民衆生活への影響を視野にいれながら考察し、軍隊の存在、戦争を準備することの意味を新しい視角から問いなおします。
目次
軍用地とは
1 軍隊と軍用地の誕生
2 日清戦後軍拡から日露戦後軍拡へ
3 大正期=軍用地をめぐる諸問題の噴出
4 満州事変後の軍拡とその結果
戦後へ
著者等紹介
荒川章二[アラカワショウジ]
1952年生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。専攻、日本近現代史。静岡大学情報学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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更紗蝦
15
近代日本の軍用地拡大の過程と、軍用地が一般市民の暮らしに与えた影響を考察した本です。文書として記録に残っている嘆願書や訴訟の内容がなかなか興味深いです。「かつて内国植民地といわれた(沖縄と北海道の)両地域に、戦後軍用地が集中している」(106p)「日本列島上の軍用地の半分は二つの国(日本とアメリカ)の軍事力が共有する」(107p)という著者の指摘は考えさせられます。2014/10/14
chang_ume
10
近代「軍用地」の発生と展開を、戦後現代の状況と接続しながら通観する。2000年代、現代日本の軍用地総面積は、日露戦後の水準をしのぐレベルにあることにまず驚いた。しかもそれは、沖縄への異常集中というかたちで軍用地が設置された状態。つぎに、明治初年の東京の都心部に集中した軍用地が郊外へと分散されていく過程が、そのまま近代日本の各地方「軍都」の類型に相当する指摘も重要です。軍都の第1類型として旧城下町に多い都心部への軍用地集中(大正期以降に郊外へ分散傾向)、第2類型は軍用地が郊外化した都市群として。良書でした。2020/01/09
らっそ
9
戦前でも軍用地への接収に反対があったこと、値段をふっかけていたことにびっくり。満州事変より前は、国(軍)と民間の距離感・関係は、現在とそんなに違いがなかったのかもと思った。2017/08/21
Jirgambi
2
軍事関係だが軍事史的で無く、寧ろ地域史的なテーマ。ただ本書では、一地域又は個別事例に留まる事無く、全国的かつ明治〜戦後までの潮流を扱う。中心部に軍用地がある故都市開発が出来ない、と市議会が陸軍に堂々と主張するケースもあるのか、面白かった。2019/06/08