内容説明
琵琶湖に水源をもち、大阪湾に注ぐ近畿最大の河川である淀川をいかに治めるかは、古代以来、その時どきの政権担当者が直面した国家的重要課題であった。とくに、近世においては、その最下流部に位置していた重要都市大坂の発展と保全を図りつつ、淀川の治水システムを確立させる必要があった。本書では、豊臣政権期および江戸時代における淀川治水の実態を、畿内河川整備事業の展開、堤防維持システムである国役普請制度の確立過程、日常的な河川管理制度のあり方などの側面から検討してみたい。
目次
治水史からみる近世淀川
1 豊臣政権期の淀川
2 17世紀の淀川川筋問題と幕府の治水策
3 摂河国役普請制度
4 17世紀の河川管理制度
5 18世紀以降の変化
近代的治水の起点
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アメヲトコ
5
近世の淀川水系の治水政策についてまとめた一冊。堤防管理(堤奉行)と水路管理(川奉行)の二元化の流れ、工事費負担の仕組み、治水と開発の矛盾など、当時の河川行政の論点がコンパクトにまとまっていて、入門書としても良いです。2018/09/27
ハル牧
1
豊臣政権期から寛文期、貞享期、元禄期に渡って大規模に行われた畿内河川整備事業を、簡潔にまとめた本。事業だけではなく、普請のための制度、河川管理制度も入門レベルで把握することが可能。著者が用いる「大坂重点主義的性格」については、本文にて触れられている大和川付替えの事例の他に、例えば瀬田川周辺にまつわる史料を絡めて考えてみたりしても、頷けるのかもしれない。2019/10/26
こずえ
1
淀川を具体例に、江戸時代の河川事業について俯瞰することができる。歴史系というか土木系の人が治水の歴史を知るための最初の1冊として最適。
紙魚
1
江戸初期から中期にかけての河川行政史といったところ。私としては郷土の歴史でもあり、大和川付け替えなど、小さい頃に習ったことも簡潔に述べられており、興味深かった。河川担当の役所が二元的であったり、工事の負担が封建的なかたちであったりするが、筆者も述べている通り、このような大事業を継続できるようになったところに、近世権力がいかに強大であったかが見てとれる。2009/06/01
わ!
0
日本史リブレットというシリーズで、ごくごく薄い小冊子なのだが、おそらく読んだ数冊の淀川の本の中で、一番マニアックな本だった。いわゆる「堤奉行」とか「川奉行」などの役職や、その切り分けなどに関して事細かに書かれている。 まさに、歴史に興味がない人などには、どうでも良い話である。さらにここまで細かい内容となると、少々歴史に興味がある人にとっても、どうでも良い話なのではないだろうか。2019/04/17
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