内容説明
近世(江戸時代)の日本は、世界のなかで有数の鉱業国でした。この時代の半ばまでは貿易輸出品も大半が鉱山で生産された金・銀・銅でした。鉱業を担った近世鉱山はどのような社会であったか、どのようにイメージできるか。本書では、近世社会から鉱山社会をみる、鉱山社会から近世社会をみる視点で、史資料にもとづき鉱山社会像を描き提示します。近代になって日本の鉱業は新たな出発をします。近代へ連なる近世鉱山社会の様相と到達点も探ります。
目次
1 近世鉱山社会への眼差し
2 鉱山支配と近世社会
3 鉱山社会の法
4 鉱夫の社会集団
5 鉱業生産と労働、生活
6 鉱山住民の闘い
著者等紹介
荻慎一郎[オギシンイチロウ]
1951年生まれ。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。専攻は日本近世史。現在、高知大学人文学部教授、博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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更紗蝦
12
江戸時代の鉱業(この時代に採掘していたのは金・銀・銅)を社会的な面から分析している本です。明治から昭和にかけての炭鉱労働の様子を記録した山本作兵衛氏の画文集と比較すると、事故や肺病の危険性と隣り合わせの過酷な労働環境であったことは共通していますが、江戸時代はどうやら女子供は採掘作業をしていなかったらしい点(少なくともこの本には女子供が採掘作業をしていたという記述はありません)や、「逃散」という形で労働者の要求を通すという一揆の戦術が有効であった点は、明治以降の炭鉱労働と大きく違います。2015/08/02
海星梨
6
大変面白かった。30代で公害病で亡くなる、忙しい時は4交代制六時間労働、シフト厳守破ったら身体罰+追放という厳しさ。遊廓に行く余暇なんてねーよ笑 なんかの小説で鉱山夫が年上妻をもらうみたいな話があったけど、第一子と同じ年頃の夫を持つことがあったとか興味深く読んだ。神社寺院が敷地内にあったりとか、衰退期には一揆起こしたりとか、江戸時代の鉱山社会に迫る一冊。2021/11/08
takao
0
☆秋田の例が多いな。2016/11/06
Ami
0
佐藤信淵著の「坑場法律」や、近世鉱山である東北の院内銀山その他鉱山の実例やそれを自領として持つ藩の書物を取り上げ、近世鉱山社会を解説している。最終的に、山師達のために遊女屋や賭博場を整えたと記す「坑場法律」は架空の産物に過ぎなかったと結論付けている。もう少し前の時代は遊女屋や賭博場もあったかもしれないのに、散々「坑場法律」を参照しながら最後に否定する性急な結論は残念だけど、全体的には興味深かった。2018/02/12
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