出版社内容情報
朝廷を支えてきた室町幕府が衰退し、戦国時代の朝廷は困窮していた。天皇の日記等から、その仕事やくらし、廷臣との関係を解明し、難しい舵取りを迫られた天皇が何を守ろうとしたのかを考える。
末柄 豊[スエガラユタカ]
著・文・その他
内容説明
南北朝時代以降の朝廷は、室町幕府の支援なくしては成り立ちえないものになっていた。それだけに、応仁・文明の乱によって室町幕府が衰退の道を進んだことは、朝廷にも大きな試練を与えた。そして、朝廷という組織を安定的に存続させるため、天皇は難しい舵取りを余儀なくされたのである。少なからず残されている天皇自身の手になる文書や日記を読み解くことによって、彼らの意識や思考のありようを探り、戦国時代の天皇が何をいかにして守ろうとしたのかについて考えてみたい。
目次
天皇の戦国時代
1 天皇になること
2 天皇の仕事
3 天皇のくらし
4 天皇をめぐる人びと
禁裏と朝廷
著者等紹介
末柄豊[スエガラユタカ]
1965年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科中退。専攻、日本中世史。現在、東京大学史料編纂所准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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浅香山三郎
14
日本史リブレットのシリーズのなかでも、特に読みごたへがあるやうに感じた。ややもすると、イメージだけが先行する形で語られる「戦国時代の天皇」のありやうを廷臣の日記等を博捜して明らかにする。「朝廷」を構成する諸機能が縮小し、天皇とその近臣のみによつて構成される「禁裏」が「朝廷」の内実となる状況を指摘。多くの公家が在京していない中で、天皇自身があらゆる事柄に関与し、記録も残さねばならぬゆへに、天皇の個性がよく見へてくる時代であるのが興味深い。2018/07/05
さとうしん
13
天皇を経済的にバックアップしていた室町幕府の衰退が日常生活や儀礼などの天皇の活動、あるいは天皇を支える皇族、女官、廷臣たちに何をもたらしたかを、天皇自身の文書や日記を史料としてまとめる。天皇自身のたゆまぬ努力によって天皇という存在は何とか次の時代まで持ち越すことができたが、戦国時代を乗り切れずに消え去った物事や人々の持つ意味合いの大きさを考えさせられる。2018/10/30
新田新一
7
戦国時代に天皇が何をしていたかを書いた本です。お金がなくて葬式をするのさえ難しい状態で、それでも政務を続けました。戦乱が続いて、当時の室町幕府からの援助が途絶えがちでした。ただ、完全に途絶えたのではなく、中断を挟みながら細々と続けられていました。皇室に対する敬意は当時の武将たちも持っていたようです。歴代の天皇は昔から伝わる伝統の行事を続けようと奮闘。その意味で当時の天皇は、日本の古来からの文化を守ろうとした人々だったと言えます。2023/08/26
Minoruno
6
室町時代終盤から戦国時代にかけて、天皇とそれを補佐する貴族の暮らしぶりをわかりやすく伝えてくれる戦国王宮入門書。室町時代を通じて財政の殆どを幕府にバックアップしてもらっていたのが、応仁の乱以降その幕府の求心力が落ち、財源を確保出来ず生活のあらゆる部分に支障をきたしていくところは涙無しには読めない。戦国時代の天皇家は本当にお金が無い。お金が無くて何も出来ない。それに尽きるというお話だった。お金大事。本当に大事2018/11/11
軍縮地球市民shinshin
6
戦国期の天皇の様子がよく分かる快著。2018/10/02