内容説明
本書の対象とする時期(昭和十年~十二年)の、貴族院議員・伯爵有馬頼寧氏は、産業組合中央会で会頭に選任される一方、政治的には近衛文麿を中心とする新政党結成を企画し、いわゆる「荻窪会議」に参加するなど、近衛新党樹立のために奔走し、第一次近衛内閣成立とともに農林大臣に就任し、政界中枢にあって最も活躍した時期に当たっている。また昭和十一年には、二・二六事件が起こり(この事件では、有馬氏の次女静子の舅・斎藤実内大臣が凶弾に倒れている)、以後政権も岡田啓介、広田弘毅、林銑十郎、近衛文麿とめまぐるしく交代し、世情は混迷の度を加えていく。このような時期の日々の記録は、現代日本政治史そのものであり、同時にまたそこに描かれている日常の情景は、戦前の貴族社会を描きだした貴重な第一次史料であるといえる。