出版社内容情報
大学の研究者と高校の教員がともに、現代世界の諸問題を歴史的に即して考えることをコンセプトにした講座シリーズ『いまを知る、現代を考える 山川歴史講座』。
その第1弾「国際平和を歴史的に考える」は、不安な世界情勢を目の前にして、そもそも国家とは何か、国際連盟をつくった人びとはどのようにして平和を構築しようと考えたか、またヨーロッパとは異なる支配体制をおこなってきた国々は何を平和と考えたのか、といったさまざまな疑問を、紐解いてゆく。
内容説明
「国際平和」の概念が生まれたのは、いつ頃の話?勢力均衡(バランスオブパワー)は「国際平和」に繋がるの?アジア諸国における「国際平和」をどう捉えたらよいのだろう?国際連盟・国際連合などの「平和講築のシステム」は、何が問題なのだろう?平和を維持するためにはどうしたら良いのだろう?こうした疑問を前提に歴史学の立場から問い直す。
目次
序章 「歴史的に考える」国際平和
第1章 アジア史から見る「国際平和」
第2章 主権国家体制下の戦争と平和―ヴェストファリア条約から第一次世界大戦まで
第3章 二十世紀における国際体制の展開と平和
コラム 冷戦期、およびその終結後の世界と国際平和
国際平和を歴史的に考える 座談会
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かんがく
12
国際平和をテーマに、東アジアの国際秩序、ヨーロッパの国際秩序、国際平和機構という3つの章でそれぞれの専門家が概説を行う。内容としては高校世界史教科書に毛が生えた程度でかなり入門者向けであった。2024/06/10
ピオリーヌ
9
現代の「国際平和」というような秩序・体制はどこから始まるのか。そうした関心から国際秩序の出発点となった、十七世紀のいわゆるウェストファリア体制の成立を検討。さらに現代に直結する二十世紀、悲惨な世界大戦を経て、「国際平和」を痛切に意識した国際連盟以降の国際秩序を考える。以上は欧米・近世・近代に軸足を置いた議論になるので、バランスを取るため、以上に加えて、アジアの視点からやや長いタイムスパンで「国際平和」を見直してみる論述を配置する内容。全体的に平易に語られ、大変読みやすい。2024/05/27
飯田真人
2
現代の国際情勢や国際平和を歴史的に読み解く本。第一章では、アジア史の観点からそもそもの「国家」や「国際」とはなんたるかを解説していて、二章では中世ヨーロッパの長い18世紀の、ウィーン体制やウェストフェリア体制、会議による平和などの当時の戦争を防ぐ平和的なシステムを解説していて、第三章では、戦後の国際連合と国際連盟を比較して、どのように平和を構築していくんかについて解説している。一般的には歴史は暗記科目であるという見方が強いが、このように歴史を現代に生かすgのが大切。2023/09/02
お抹茶
2
高校の新科目・歴史総合が目指すのは,この本の内容のような歴史理解なのかも。特に興味深かったのは,東アジア史における「国際」関係。東アジアでは,現在イメージされるような,ネーション同士の対等を原則とした秩序体系ではなかった。また,19世紀の国際法はヨーロッパ公法で,それが通じる領域がインターナショナルの場・文明だった,という指摘にもなるほどと思った。改めてタイトルを読んで,一面的な「国際」と「平和」の捉え方では歴史を見誤るということに気づかされた。2023/02/28
Masaki Iguchi
1
▼国家あるいは「国際」自体がすぐれて現代的な政治課題となることが、とりもなおさず国家・「国際」を歴史的にもち得なかったアジアの問題にほかなりません。▼「国際」とは元来、キリスト教世界・西欧固有のものであります。逆にいえば、非キリスト教世界では、「国際」関係・「国際」秩序は生まれてこない、ないしは定着しづらい、とみてもよいことになります。2023/02/26